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攻める日銀?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は2日の国債買入にて、残存10年超25年以下のオファー額を前回の1400億円と前回の1600億円から200億円減額させてきた。残存25年超は400億円とこちらの買入予定額は前回から据え置かれた。

 先週30日の国債買入では、残存5年超10年以下の国債買入を前回から500億円減額した。減額はあっても200億円か300億円との見方が強かったが、500億円という金額はサプライズであった。同日夕方に発表された9月の国債買入予定でも、それが反映されたものとなった。しかし、超長期ゾーンの買入レンジ等は据え置かれていた。このため、長期ゾーンの大幅減額があったので、当面の国債買入は現状維持かと思っていたが、さらなる減額を連続して行ってきた。

 ここにきての金利低下を睨んで、まさに日銀は攻めてきているようにみえる。30日の長期ゾーンの国債買入減額も、2日の超長期ゾーンの減額も、債券先物は多少動いたものの、ドル円や日経平均に動揺はみられないどころか、ほとんど無視された格好となった。

 相場をみているとわかるが、市場はその時々で注目するものが変化する。材料に対する感応度の変化を体感できないと、少なくとも短期的なトレーディングはできない。日銀の国債買入に対する外為市場や株式市場の感応度はここにきて極度に低下しているといえる。再び日銀の金融政策への注目度が上がれば、反応は違ってくるかも知れないが、少なくとも日銀の金融政策の量に対しては以前に比べて関心は失われている。

 現在の日銀の金融政策の政策目標はマネタリーベースとか当座預金残高といった量ではない。短期金利と長期金利という金利となっている。このため、政策の変化はこの金利の動きが注目されている。

 それでも日銀はいまだに「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という看板と「(長期国債の)買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ」という表現は据え置いている。しかし、このペースだと来年の保有残高の増加額は80兆円に全く満たないことになる。

 日銀は少なくとも量については非常時の対応から平時の対応に戻してきているといえる。あとはETFなどの買入もタイミングを見て削減したいところではあるが、こちらのタイミングは難しい。さらにオーバーシュート型コミットメントについても修正を加え、いずれマイナス金利そのものも修正すべきではあるが、こちらがあってこその量の調整が可能との見方もあるかもしれない。兼ね合いが難しいところでもある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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