ドラギ総裁発言でユーロ圏の国債利回りがマイナスに
ECBのドラギ総裁はポルトガルのシントラで開催のECB年次フォーラムの冒頭演説で、見通しが改善せずインフレ圧力が強まらない場合は「追加の刺激策が必要になるだろう」と述べた。ECBはフォワードガイダンスの修正が可能であるとともに、利下げは政策手段の一部であり資産購入も選択肢だと語った(ブルームバーグ)。
この追加緩和を示唆した格好のドラギ総裁の発言に対し、米国のトランプ大統領は18日、米国に対する不公平な競争につながる可能性があるとして批判した。そのトランプ大統領はFRBのパウエル議長に対して金利の引き下げを迫って圧力をかけているとされる。
FRBは今月末のG20サミットでの米中首脳会談の動向などをみながら、7月のFOMCで利下げを模索するとみられている。ただし、あからさまなトランプ大統領からの利下げ圧力に屈する格好は取りたくはないであろう。あくまで景況感の悪化などを理由に利下げを模索してくるのではなかろうか。
18日の欧州市場ではドラギ総裁が追加緩和を示唆し、その手段としてまずは利下げが行われるのではとの見方から、欧州の国債が買い進まれた。ドイツの10年債利回りはマイナス0.3%台をつけて過去最低を更新。オランダの10年債利回りもマイナスとなり、フランスとオーストリアの10年債利回りは初めてマイナスとなった。米債も買われ、米10年債利回りも2017年9月初旬以来の水準に低下した。
18日に発表された5月のユーロ圏消費者物価指数の確報値は前年比プラス1.2%、コア指数は前年比プラス0.8%と速報値から変わらずとなったが、目標とされる2%には距離があることは確か。
大阪でのG20サミットで米中首脳会談が開催され、貿易交渉が多少なりとも進展する兆しがみえるようなことになると状況は変化してくる可能性はある。米国での景況感が改善される可能性があり、FRBの利下げ観測が後退してくるかもしれない。その場合にはECBも追加緩和を急ぐ必要はなくなるかもしれない。
しかし、交渉が決裂となれば7月のFOMCでの利下げ、それに追随してのECBの利下げが現地味を帯びてくる。そうなると日銀も動かざるを得ないといったシナリオも出てくることが予想される。副作用なき追加緩和が日銀にとって可能なのであろうか。