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日銀は2019年度の物価の見通しを下方修正

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 16日にロイターは、「複数の関係筋によると、日銀は22、23日に開く金融政策決定会合で、原油価格の下落などを踏まえて2019、20年度の消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しの下方修正を議論する」と伝えた。ブルームバーグや産経新聞も同様の記事を報じていた。

 1月23日の決定会合後に日銀は、経済・物価情勢の展望、いわゆる「展望リポート」を公表した。昨年10月の前回の同リポートでは、コアCPIの前年比上昇率(政策委員の大勢見通し)の消費税率引き上げの影響を除くケースで2019年度が1.4%、2020年度が1.5%となっていた。

 念のため、直近のコアCPIについて確認してみると、2018年度は4月が前年比0.7%、5月が同0.7%、6月が同0.8%、7月が同0.8%、8月が同0.9%、9月が同1.0%、10月が同1.0%、11月が同0.9%、12月が同0.7%となっていた。

 ここにきてのトレンドも前年比の上昇幅が減少傾向となっている。その要因としては、日銀の買い入れる資産の量が減っているから、ではなく原油価格の下落がある。前回リポート時にWTI先物は1バレル70ドル程度だったが、足元で50ドル台となっている。消費者物価指数は日銀の資産買入の量とかではなく、マイナス金利でもなく、原油価格の動向や為替の動向に影響を受けやすい。

 日銀内では、2019年度の物価見通しについて1.4%を下回る、1%前半への下振れの可能性を指摘する見方が出ていた(ロイター)。

 現実を見据えるのであれば、せいぜい1%あたりではないかとも思われる。2%という物価目標に固執するあまり、どうしても上振れの数字が出やすいような気がする。

 2020年度についても、原油を含めて2019年度の一時的な下押し要因が剥落するものの、米中貿易摩擦などを背景に世界経済は、緩やかな減速が見込まれることで、若干の下方修正の必要性が議論されるもようだ(ロイター)。

 2019年度に実施される予定の幼児教育の無償化に伴って、内閣府によると同年度の消費者物価を0.3ポイント押し下げるという試算結果が出ているそうだが、政府が物価上昇の足を引っ張る格好となっているようである。

 実際に23日に発表された展望レポートでは、2019年度の「消費税率引き上げ・教育無償化政策の影響を除くケース」で、プラス0.9%と10月のプラス1.4%から予想以上に大きく下方修正。現実を見据えた修正となっていた。ただし、2020年度については同ケースとして、プラス1.4%として10月のプラス1.5%から小幅な下方修正に止まっていた。

 そもそも論として物価目標2%に無理があったことを日銀としては認めることも必要ではなかろうか。物価を2%まで金融政策だけによって引き上げるという考え方に間違いがあったことを素直に認め、現実に即した目標に修正し、景気や物価動向、さらには金融市場動向に応じた柔軟な政策となるよう修正すべきだと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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