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トランプ・ショックで株価が急落

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 12月25日のクリスマスの日経平均はあっさりと2万円を割り込み、大きく下落した。ドル円は110円台前半に下落しており、リスク回避の動きを強めた格好となった。米国のダウ平均も日本の日経平均もそれぞれ年初来の安値を更新した。

 この米国を主体とした世界的な株安の背景は何か。24日の原油先物市場ではWTI先物が42ドル台に下落しており、これからもわかるように世界的な景気減速の懸念が背景にあることは確かであろう。しかし、特に米国株式市場での地合を悪化させているのはトランプ大統領そのものと言えよう。

 トランプ大統領はここにきての株価下落の犯人はFRBのパウエル議長だと決めつけて非難している。米国大統領がFRB議長を解任するにはかなりハードルが高いものの、解任手段を検討しているとされている。

 しかし、少なくともFRBによる12月の利上げまでは市場もかなり織り込んでおり、利上げによるサプライズで株価が下落したわけではない。むしろ、FRB議長を解任しようとしている大統領の姿勢そのものが不安視されている。

 これに対してムニューシン財務長官はパウエルFRB議長の解任を否定した上で、米銀大手6行のトップと相次ぎ電話で会談し、市場の流動性について確認したされる。さらに米財務省はFRBや米証券取引委員会(SEC)などの代表者と金融市場を巡る大統領作業部会(PWG)を24日に開くと公表した(日経新聞電子版)。

 この大統領作業部会そのものは1987年の株価暴落後に発足した会議であり、この動きはむしろ市場の不安を煽るような格好となった。

 さらに株価下落に苛立ちを示すトランプ米大統領は、ムニューシン財務長官の解任を検討しているもようと、関係者の話としてブルームバーグが伝えた。確かにトランプ大統領のお怒りの矛先が、ムニューシン財務長官にも向けられる可能性は否定できない。

 今回の株価下落の要因は景気減速懸念であったとしても、それを加速させたのはトランプ大統領そのものの言動といえよう。マティス国防長官が退任を表明したことや、トランプ大統領が要求するメキシコ国境の壁建設費用を巡る対立による政府機関の一部閉鎖、さらには米中の貿易摩擦が再燃する懸念等々、ほとんどがトランプ大統領が蒔いた種に対して、市場が不安を募らせた結果の株安などのリスク回避の動きといえる。

 もし今後、ムニューシン財務長官やパウエルFRB議長が解任されるような事態になると、市場はリスク回避の動きをさらに加速させかねない。このことにさすがにトランプ大統領も気がついたのか、25日にホワイトハウスで記者団からパウエル議長について問われた際に、当局の利上げペースは速過ぎるとしながらも、信頼しているのは確かだとも発言し、解任と言う言葉は出てこなかった。ムニューシン財務長官に対しても信頼を置いていることを示した。しかし、あくまで株価を気にしての発言とみられ、これが本音ではない可能性も当然ある。メキシコ国境の壁建設費用を巡る対立については解消のメドはたっていない。年末年始に向けて市場があらためて大荒れとなる可能性もありうるか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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