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原油先物価格の上昇トレンドが崩れる。世界的な景気減速の兆候なのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 原油先物のベンチマークといえるWTI先物のチャートをみてみると、今年7月3日に75ドル台まで上昇したあと調整売りが入り、8月中旬に65ドル近辺まで下落した。これには米国による対中追加関税措置の発動なども影響していたと思われる。中国が米国産原油に関税を課すことなどへの懸念も出ていた。

 しかし、その後は米国株式市場の上昇に歩調を合わせるような格好となり、原油先物もじりじりと回復し、WTI先物は70ドル台を回復した。10月3日に77ドルに接近したところでピークアウトした。米国株式市場のダウ平均も10月3日に27000ドルに接近したところで同じくピークアウトしている。

 その後のWTI先物はダウ平均と同様に下落し、10月23日に66ドル台に下落した。チャート上からは、このあたりが正念場となっていた。8月につけた65ドル近辺を大きく割り込むようであれば、上昇トレンドがいったん崩れる格好となる。

 上記は10月に書いた「原油先物価格にみる適温相場の変調」から引用したものだが、足元のWTI先物は60ドル台に下落しており、チャートからは上昇トレンドが崩れたかたちになっている。

 ここにきて原油先物価格が下落していたのは、イラン産原油の供給混乱に対する懸念が後退したことなどが指摘されている。しかし、原油そのものの需要が後退している可能性もあるのではなかろうか。また、サウジアラビアと米国の関係悪化など政治上の問題も絡んできている可能性もある。

 米中間選挙という大きなイベントが終了し、米国の株式市場が大きく戻してるが、この原油先物価格の動きを見る限り、再び米国株の上昇トレンドが回復するかどうかは疑わしい面もある。

 来年は世界経済を牽引していた米国経済についても減速してくるのではとの見方も出てきている。米国と中国との貿易摩擦による影響も次第に出てくることも予想される。株価の復活シナリオが完全になくなったわけではないものの、原油価格の動きを見る限り、リスクシナリオも意識しておいた方が良いのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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