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トランプ大統領のクレームも意に介さず、利上げを続けるFRB

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 17日に公表された9月25、26日に開催のFOMC議事要旨によると、「数人の参加者は、政策が当面やや抑制的になる必要があるとの見解を示し、他の幾人かはフェデラルファンド金利を当局が予想する中長期的なレベルを上回る水準へ一時的に引き上げることが必要になると判断した」との記述があった(ブルームバーグ)。

 FOMCメンバーの直近の予測では、当局者らは中長期的な中立水準を3%程度と推定している。9月のFOMCではFF金利の誘導目標レンジを0.25ポイント引き上げ2%から2.25%とした。市場ではあと何回利上げが行われるかを注目している。

 9月のFOMCにおける参加者メンバーの金融政策見通しによると、今年の利上げ回数は4回と前回予測と変わらず。2019年は計3回、2020年は1回。2021年はゼロとの予測となっていた。

 3%にはあと4回程度の0.25%の利上げで届くことになる。今年の12月のFOMCで利上げが実施されれば、来年の3回程度の利上げにより、中長期的な中立水準に届く。果たしてそれにむけて利上げペースを落としてくるのかも焦点となろう。

 11月の中間選挙を控え、米長期金利の上昇が株式市場の大幅調整の要因となっていたこともあり、トランプ大統領はFRBの利上げに対しての批判を強めている。

 10日にトランプ大統領は、「FRBは間違いを犯している。彼らは引き締めすぎている。FRBはクレージーだと思う」と記者団にコメントした。さらに16日にはインタビューで、「連邦準備制度が進めている金利引き上げはペースが速過ぎる」とトランプ大統領は語っていた。

 批判の発言はあっても、いまのところはトランプ政権がFRBに直接的な圧力などを加えている形跡はない。独立性を後退させかねない日銀法の改正までちらつかせて、結果的に物価目標の達成はできなかった大胆な金融緩和策を実施させたところもあったと思うが、いまのところは米国のほうが中央銀行の独立性に配慮しているようにみえる。

 FRBは淡々と利上げを継続させることが予想されるが、ここにきて株式市場が調整局面となっているなどいわゆるゴルディロックス(適温)相場が変調を来す懸念も出ている。米国の物価は比較的安定していることもあるが、来年以降の利上げペースについては、トランプ大統領の意向等に関わらず、慎重になってくることも予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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