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日銀は国債買入を実質的に減額、注目は本日の長期ゾーンの国債買入額

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 9月4日の日銀による国債買入オペレーションにおいて、中期ゾーンの買い入れ予定額は1年超3年以下を前回から500億円増額の3000億円、3年超5年以下を500億円増額の3500億円とした。それぞれ500億円増額した格好ながら、8月31日の夕方に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」で明らかにされたように、カレンダースケジュールの都合もあってか買入の回数を8月の6回から5回に減少させていたことによる増額であった。

 「当面の長期国債等の買入れの運営について」で示された1年超3年以下の買入額は、2000~4000億円程度となり、8月の2000~3000億円程度から上限を1000億円増額した。市場参加者というか日銀もこの中央値を意識しているようで、8月の中央値が2500億円、9月の中央値が3000億円となり、増額もそれに沿ったものとなった。

 つまりこれにより、1年超3年以下の買入額は、8月は2500億円が6回(1兆5000億円)から、9月は3000億円が5回(1兆5000億円)となり、1年超3年以下の買入額は総額は不変となった。

 3年超5年以下についても、2500~4500億円程度と、8月の2500~3500億円程度からレンジの上限を1000億円増額した。中央値については8月の3000億円から3500億円となり、3年超5年以下についても中央値でのオファーとなった。

 これにより、3年超5年以下については8月が3000億円が6回(1兆8000億円)から3500億円が5回(1兆7500億円)となり、月額ベースでみれば500億円の減額となる。

 簡単な計算といえばそれまでだが、表面上は一回当たりの買入の増額となっているし、レンジも上限が引き上げられ、いかにも増額のように見えながらも、実質減額となる。ただし、500億円程度の減額という見方もできる。

 減額そのものは債券市場関係者はむしろ歓迎するであろう。これに対し、過去に日銀の国債買入減額に敏感に反応していた外為市場や、それをみて反応していた株式市場には、今回の実質減額はほとんど影響を与えなかった。

 それはさておき、日銀は中期ゾーンだけでなく、長期ゾーンの買入回数も9月は減らしている。9月5日に10年国債の入札があり、6日には長期ゾーン(5年超10年以下)の国債買入が予定されている。

 中期ゾーンに習えば、長期ゾーンの8月の買入レンジ3000~5000億円となり、中央値と買入額は4000億円となっていたところ、9月のレンジは3000~6000億円に修正されたことで中央値は4500億円となる。

 もし6日の買入額が4500億円と一回あたりの買入額を500億円増額するとなれば、月額換算で4000億円6回(2兆4000億円)が、4500億円5回(2兆2500億円)となり、こちらは1500億円の減額となる。さすがに1500億円の減額となれば、それなりに影響も出るかもしれないが、こちらの動向も要注目となる。ただし、債券市場では1500億円の減額もそれなりに織り込んではいる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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