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海外投資家の比率が高い日本国債先物取引

久保田博幸金融アナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

 3月12日に長期国債先物取引(債券先物取引)において、中心限月が3月限から6月限に実質的に交代した。債券先物取引において、取引している人達にとっては、日中の出来高が逆転したタイミングで中心限月が移行したとする。

 日本の債券先物取引は商いが中心限月に集中するという特徴がある。このため、ある限月の取引最終日が近づくと期近物から期先物に中心限月がバトンタッチする。そのタイミングが日中の取引が逆転したタイミングとなる。今回でいえば日中取引(ナイトセッションはいまのところ例外)において、6月限の取引量が3月限を上回った瞬間が中心限月移行となる。

 過去において取引高が再逆転した例はあったように記憶しているが、それはむしろ例外中の例外であり、通常はそのまま新たな限月の取引量が多くなる。ただし、取引所が中心限月移行と認識するのは、ナイトセッションを含めたトータルの出来高が逆転した翌営業日となっていることにも注意しておきたい。

 さて、この債券先物取引だが、現在はどのような参加者がいるのであろうか。日本取引所グループのサイトのなかに、マーケット情報というものがあり、そのなかに投資部門別取引状況というものがある。ここで取引しているのは誰なのかが、おおよそわかる。

 年別のデータのなかから、2017年のものをみてみると投資部門別国債先物取引状況(自己・委託なし)では、証券会社が32.02%、銀行が12.16%、海外投資家が54.51%となっており、海外投資家のシェアが5割を超えている。

 さらに投資部門別取引状況(自己・委託別)でみると、自己が41.7%、委託が58.3%となっていた。さらに委託の内訳では、海外投資家が93.4%を占めていた。

 つまり債券先物の55%近くの取引は海外投資家からの委託によって占められていると言える。残りは国内の証券や銀行による自己といった区分けとなりそうである。

 それでは海外投資家の委託分とはどのようなものであるのか。これについては日経225先物などではHFT( High frequency trading)と呼ばれる高頻度取引がかなりの割合を占めているとされる。

 債券先物については値動きなどをみても、いまのところHFTの割合はそれほど高いとは思えないが、それでも3月2日に黒田日銀総裁の発言を受けて債券先物が60銭も動いたのはHFTという見方もできそうである。

 ただし、それでもまだHFT以外の海外投資家の割合が多いと思われ、ヘッジファンドなどによる商いもかなりのシェアを占めているようにも思える。HFTもじわりじわりと債券先物に浸透しつつあるのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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