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日銀が28日に超長期国債の買入を減額した理由

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 2月28日に日銀は中期ゾーンと超長期ゾーンの国債買入をオファーした。残存1年超3年以下は2500億円、3年超5年以下3300億円、10年超25年以下1900億円と、ここまでは前回と同じ金額のオファーであったが、25年超については700億円と前回の800億円から100億円減額した。

 今年に入ってからの日銀による国債買入額の修正について、振り返ってみたい。

 1月9日の国債買入において日銀は残存10年超25年以下の買入額を1900億円と前回の2000億円から減額し、残存25年超も800億円と前回までの900億円から減額した。これは市況環境によるものというよりも、来年度の国債発行計画でこの超長期ゾーンも含めて発行額が減額されることもあり、日銀は少し早めに手を打ってきたとの見方もできた。減額そのものは想定内ではあってもタイミングがやや想定外となったことで外為市場が動意を示し、ドル円は113円近辺から112円台半ばに下落した。

 1月22、23日に開催された金融政策決定会合における主な意見では、「超長期国債の買入れ減額が金融政策の意図せざるシグナル効果を持ち得るのであれば是正すべきである」との意見が出ていた。これはリフレ派からの意見と思われるが、9日の外為市場の動きなどを意識した発言かとみられる。

 1月31日の国債買入において日銀は3年超5年以下について前回26日の3000億円から3300億円に300億円増額した。欧米の長期金利上昇を背景に日本の10年債利回りが0.1%に接近したことに加え、9日に超長期ゾーンを減額した際の影響を打ち消す意味もあった可能性もある。

 2月1日のFOMCでは利上げ加速の可能性を議論したとの観測に加え、米国債の発行増への懸念などから米10年債利回りは2.79%と2014年4月4日以来の水準に上昇した。イングランド銀行も利上げペースが速まるのではとの観測やユーロ圏の景気拡大によりECBの緩和縮小ペースが想定より速まるとの観測も出ていた。

 2月2日の東京市場では欧米の長期金利の上昇を受けて、10年債利回りが0.095%まで上昇し0.1%に接近した。これに対し日銀は国債買入で5年超10年以下を4500億円と400億円増額した上で、それとともに指し値オペも10年債のカレントで0.11%の水準でオファーした。これは利回り上昇を抑制するための一時的な措置とみられたが、その後5年超10年以下は4500億円のままとなっている。指し値オペだけでも良かったのではなかったろうかという気もしなくもない。

 2月に入り米株がやや高値波乱といえる動きとなり、米長期金利は一時2.95%と3%に接近後は2.9%近辺での推移が続いている。外為市場ではドル円は一時105円台をつけるなど円高も進んでいた。このような環境下、日銀は国債買入についてどのような修正をしてくるのか注目された。

 2月26日の5年超10年以下の4500億円の維持は外為市場などへの影響も考慮したものとみられる。本来であれば、ここは4100億円に戻したいところではあった。

 しかし、28日に25年超を100億円減額した。これは何故なのか。債券相場が戻り基調となり、イールドカーブのフラット化が進んでいたことでの修正というのが理由となるかもしれない。しかし、一番期間の長いところの減額ということで日銀のイールドカーブコントロールの隠れた目的でもあるイールドカーブのスティープ化が意識されたのではなかろうか。市場では大手機関投資家の意向もあったとの観測も出ていた。

 ちなみに28日の夕方には「当面の長期国債等の買入れの運営について」、つまり3月分の日銀による国債買入れスケジュールも発表された。長期国債については買入れ金額、回数ともに1月末に発表された2月のスケジュールと同じであった。ただし国庫短期証券、つまり1年以下の国債については、「金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する」として、「当面、残高を概ね10兆円台後半から20兆円台前半とすることをめどとしつつ」とする文が削除されていた。これを見る限り淡々とステルステーパリングも進められているようにも見える。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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