今回の株価の急激な調整は2003年の債券のVaRショックなどと類似か
2月5日に米国株式市場で、ダウ平均は一時1597ドル安となり、取引時間中として過去最大の下げ幅となり、引け値も1175ドル安となって引け値の前日比でも過去最大の下げ幅を記録した。これを受けて6日の東京株式市場で日経平均が一時1600円以上下落するなど大きな下げ幅となった。
5日のダウ平均の大きな下落のきっかけは、米国の長期金利とされる。2月2日に発表された米雇用統計で平均時給が高い伸びとなったことから、FRBの利上げペースの加速観測が強まり、2日の米10年債利回りは一時2.85%と2014年1月以来の水準に上昇した。しかし、5日の米10年債利回りはダウ平均の急落で2.70%に低下しており、あくまで米長期金利はひとつのきっかけに過ぎなかったようにも思われる。
米長期金利が上昇してきたといってもまだ3%にも達してはおらず、この程度の金利上昇が急速に景気を冷やすといったことも考えづらい。また、FRBが年3回としている利上げを4回とする可能性もないとはいえないが、パウエル議長となっても慎重姿勢に大きな変化はないと思われ、物価が予想以上に上昇ピッチを早めない限り、利上げ加速はあくまで市場の思惑と見ざるを得ない。
今回の米国株式市場の大幅調整の要因のひとつとして、ボラティリティインデックス(VIX)の空売りの解消なども指摘されている。たしかに米株はボラティリティが低い状態でじりじりと上昇していたことも確かで、その反動が一時的に起きた可能性がある。
ダウ平均は2009年あたりを起点とし、じりじりと上昇を続け、2016年初あたりから上昇ピッチを加速させてきた。ナスダックの7000ポイント台という節目を抜いてきたことなども意識されてか、利益確定売りなどに押されやすい局面に転じ、そのタイミングで大きな価格変動が起きて、このようなポジション調整に出た可能性がある。
それで思い出されるのが、2003年6月の日本の債券市場でのVaRショックと呼ばれた急落である。上昇の期間に違いはあったものの、債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続けた。6月11日に10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。
この相場上昇過程において、目立ったのが都市銀行の一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VaR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。つまりこの際もボラティリティが極度に低下していた。その反動によって債券相場は急落(長期金利は上昇)したのである。これがVaRショックと呼ばれた債券相場の急落であった。