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デジタル通貨に向けたあらたな試み

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 25日のNHKニュースによると、通信、銀行、保険、小売り、商社、物流に不動産…。幅広い業種から有力企業19社が集結し、「デジタル通貨」に関する包括的なサービスを手がけることになったそうである。

 25日にデジタル通貨に関するサービスを一元的に手がける新会社「ディーカレット」の設立が発表された。この新会社を仕掛けたのは、日本でインターネットサービスを始めた先駆けとして知られる通信会社のインターネットイニシアティブ(IIJ)。そして、新会社に参加する企業は下記となる(NHKニュースより)。

 IIJ、伊藤忠テクノソリューションズ、QTnet、ケイ・オプティコム。三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、大和証券グループ本社、野村ホールディングス。第一生命、日本生命、SOMPOホールディングス、東京海上日動、三井住友海上。伊藤忠商事、JR東日本、ヤマトホールディングス、ビックカメラ、三井不動産、電通の合わせて19社。

 まさに名だたる企業が集合した格好となった。この新会社が目指すのは、デジタル通貨を包括的にカバーするサービスだそうである。

 デジタル通貨といえば、ビットコインに代表される仮想通貨を思い浮かべるかもしれないが、この新会社はある意味ブームとなっている仮想通貨を追いかける会社ではないと思われる。むしろ、想定しているのは中国のスマホ決済の「支付宝(アリペイ)」や「ウィーチャットペイ」、スウェーデンでは複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済ではなかろうか。

 ビットコインの価格の乱高下をみてもわかるように、仮想通貨は通貨としては流動性リスク、価格変動リスク、そして取引所などを含めての信用リスクがあまりに高すぎることで、通貨としての利用は考えづらい。

 しかし、デジタル通貨を店での支払いに使える決済サービスについては今後、日本でも普及する可能性は十分ある。少額貨幣については日本でもキャッシュレス化は進んでいる。しかし、SuicaなどJRのカードやnanacoなどのコンビニのカードなど複数のデジタル通貨が混在していることで、それが普及を妨げている面もある。そういえば今回の19社に小売りが含まれていないのが、やや気掛かり。

 今回のIIJが始めるデジタル通貨がどのようなものであるのか、まだ具体像は見えていないが、これだけのビッグネームの企業が参加するとなれば、デジタル通貨というかデジタル決済の基盤が整う可能性がある。ただし、それはあくまでビットコインに代表される仮想通貨などではなく、法定通貨と互換性のあるものでなければならない。デジタル通貨というよりもデジタル決済の利便性を高めれば、アリペイやスウィッシュのような普及が見込めるのではないかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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