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災害時の金融機関などのバックアップ体制

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 先日、映画シンゴジラでゴジラが東京駅周辺の建物を破壊し、大手町や日本橋などに避難勧告が出された際の金融市場への影響を想定してみた。この際に日本取引所グループの取引所取引専門部会報告書なども参考にさせていただいたが、日銀をはじめ金融機関も災害時における対応は進めており、それをネットで公開されている資料からあらためて確認してみたい。

 「日本銀行の業務継続体制の整備状況とその評価」とのファイルが日銀のサイトにアップされている。ここで「日本銀行は、災害対策基本法等の関連法令等において、災害時等にも業務を継続すること等を求められている」とある。脚注には下記の説明があった。

 「日本銀行は、災害対策基本法(昭和37年施行)、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)(平成16年施行)などにおいて「指定公共機関」とされており、業務にかかる防災計画を作成し、災害発生時には同計画を実施すること等が求められている。また、首都直下地震対策大綱(平成17年)では、「首都中枢機関(経済中枢)」として位置付けられており、重要な金融・決済機能の当日中の復旧等が求められている。」

 「日本銀行では、重要な経営資源が損なわれる場合に備えて、被災想定に応じた業務継続体制を整備している。具体的には、本店(東京都中央区)、システムセンター(東京都府中市)、役職員といった経営資源が機能不全になったケースに応じて、場合分けしている。そのうえで、大阪に所在するシステム・バックアップセンター、本店の代替業務拠点、大阪支店、業務継続要員などを活用することにより、業務継続を図る体制としている。」

 日銀本店が機能不全となった際には、大阪で代替業務を行うようである。

 日本取引所グループのBCPフォーラム(取引所取引専門部会報告書)によると、こちらも業務オフィスが利用不能になった場合、関東近郊に代替オフィスを確保しているようである。

 それでは民間金融機関はどのような準備をしているのか。これについては日銀による「業務継続体制の整備状況に関するアンケート(2014年9月)調査結果」という資料があった。

 このなかでバックアップオフィスに関する部分を確認してみると「全体の8割強の先が、被災時の重要業務遂行のためのバックアップオフィスを保有しており、保有しているバックアップオフィスの数は「3か所以上」、「1か所」とする先が3割程度、「2か所」の先が2割台半ばとなった」

 「バックアップオフィスで行う主な重要業務としては、「決済関連業務」を挙げる先が最も多く、「資金繰り業務」、「為替業務」等がこれに続く」ともあった。

 これらを見る限り、ゴジラによる首都圏中央部の災害が発生しても、バックアップ体制が機能するであろうと予想される。ただし、システムのバックアップと代替オフィスが準備されていても、問題は「人」であるかと思う。こちらはさすがに完全なバックアップ体制は構築できないため、非常時の課題となる可能性がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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