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ECBは緩和ペースを緩める政策を決定

久保田博幸金融アナリスト
ECBのドラギ総裁(写真:ロイター/アフロ)

 ECBは26日の理事会で量的緩和政策の縮小を決めた。2017年12月末としていた国債などの資産購入の終了時期を2018年9月末まで延ばした上で、2018年1月以降の資産購入量を現在の月600億ユーロから月300億ユーロに減額する。

 今回の決定は大規模な緩和政策のペースを緩めるものであり、正常化に向けた一歩との見方ができなくはないが、FRBなどに比べると極めて慎重となっている。ドラギ総裁は今回の決定について、FRBが行ったようなテーパリングではなく、ダウンサイジングとしている。

 買入の終了時期を固定しないことには大多数が賛成したようで、必要に応じ来年9月末以降の延長も検討する考えを示した。経済環境次第では増額の可能性も残している。さらに資産買い取りが終了するまで政策金利を動かさないとも改めて表明しており、利上げというかマイナス金利政策の調整は、早くても2018年9月末以降になることになる。

 ユーロ圏の物価上昇率は目標の「2%近く」には届いておらず、あくまで緩和ペースをやや緩める程度の認識であることを市場参加者に認識させて、ユーロ高といった動きを牽制しようとの意図も垣間見える。実際に26日の外為市場では、ユーロがドルに対して売られ、約1年4か月ぶりの大きな下落を記録した。そして、ユーロ圏の国債もむしろ買い進まれていた。

 FRBはすでに正常化に向けてテーパリングを完了させ、利上げも行っている。イングランド銀行は資産買入の方法が日銀やFRBと異なるため、毎月の資産買入額を減額するといったテーパリングが必要なく、11月2日のMPCで10年ぶりに利上げを模索する。これに対してECBは大胆な緩和策のペースをやや緩めるだけで、緩和効果は残そうとしている。

 そして今年9月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品)が前年比プラス0.7%と、いまだ2%の物価目標に距離のある日銀も異次元緩和を継続させてはいるが、すでに調節目標を量から金利に移したことで現実的にはテーパリングを行っている。しかし、これもECB同様にテーパリングとの認識ではなく、国債市場の状況に合わせた調節との立場を取っている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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