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イングランド銀行の利上げに向けた姿勢に変化なし

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 8月3日に開催されたイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、政策金利を年0.25%に据え置くとともに、資産買い入れ枠も据え置いた。これは6対2の賛成多数での決定となった。

 前回のMPCでは、利上げを主張し続けていたフォーブス委員に加え、マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わった。その後、フォーブス委員は退任したことにより、今回の利上げ派はマカファーティー、ソーンダーズ両委員となった。

 ちなみにチーフエコノミストのホールデン(ハルデーン)理事からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識が示されていたが、同理事は今回も現状維持派のままであった。

 また今回、欧州連合(EU)離脱が経済を下押しする恐れがあるとして、成長率と賃金の伸び見通しを下方修正した。また、物価見通しについても5月の見通しからやや下方修正した。

 これを受けて市場ではイングランド銀行は容易には利上げはできないとの見通しが強まり、外為市場でポンドが売られ、ロンドン株式市場はこのポンド安から上昇し、英国債は買い進まれた。

 ただし、カーニー総裁は記者会見で「持続的な物価上昇が達成できる状況になれば、金利の変更を決めることになる」と述べ、将来的な利上げの可能性を示唆した。

 今後1年以内に利上げを開始し、向こう3年間に投資家が予想しているよりも若干高めに政策金利を引き上げる可能性があることも今回の会合では、示唆されていた。

 カーニー総裁は6月27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、中銀は利上げを実施する必要が出てくる可能性があり、金融政策委員会(MPC)はこの件について向こう数か月以内に討議すると述べていた。

 ここにきて急にEU離脱による経済金融リスクが高まったわけではない。当然ながらその懸念も意識した上で、今後の利上げのタイミングを探る姿勢に変化はないとみられる。少なくとも今回が利上げを探るタイミングではなかったとの見方もできるのではなかろうか。

 年内のMPCは9月、11月、12月に予定されている。FRBは9月に保有資産の縮小開始を決定し、12月の利上げを模索しているとみられている。そうなると外為市場での影響を抑えるためにも、イングランド銀行も9月と12月のMPCで政策変更の可能性を探ることもありうるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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