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FRBのフィッシャー副議長の発言で市場のセンチメントが変化

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

FRBのフィッシャー副議長は28日に米経済専門局CNBCのインタビューにおいて、FOMC参加者の予測中央値で示された今年あと2回の利上げは「おおむね適切なようだ」と述べ、「それは私自身の予測でもある」と語った(ブルームバーグ)。

この発言を受けて、28日の米国市場ではFRBの年内複数回の利上げが再認識され、ドルが買われ、米長期金利が上昇した。米金利上昇を好感して銀行株が買われ、ダウ平均は150ドル高と9日ぶりの反発となった。3月の米消費者信頼感指数が市場予想を上回ったことや、iPhoneの新モデルへの期待からアップル株が上場来高値を更新するなどしたことも要因ながら、米国市場のセンチメントがフィッシャー副議長の発言によってやや変わったことも確かではなかろうか。

スタンレー・フィッシャー氏については以前にも紹介したが、米国とイスラエルの両国籍を持ち、2013年6月まではイスラエル銀行の総裁だった。バーナンキ前FRB議長やドラギECB総裁などを教えた大学教授であっただけでなく、世界銀行チーフエコノミスト、IMF筆頭副専務理事、民間銀行などで実務も経験している。オバマ大統領(当時)は、世界で最も優秀で経験豊かな経済政策の専門家のひとりとして広く認められていると語ったが、それに嘘偽りはないであろう。

現在のFRBの金融政策の方向性はイエレン議長とともにフィッシャー副議長が中心となって決定していると思われる。もちろん金融政策の決定は委員会制度を取っており、合議制ではあるが、舵を握っているのはこの2人が中心とみられる。

フィッシャー氏の副議長としての任期は2018年6月まで満了となる。その前にイエレン議長の任期は2018年2月となっている。トランプ大統領はイエレン議長の再任はないと言っており、トランプ氏が任期満了時にも大統領の席にいるのであれば、イエレン議長とそれを支えたフィッシャー副議長の再任はないとみられる。

ただし、理事としての任期は14年となっており、理事としてFRBに残る可能性はゼロではない。しかし、こういった例は過去に一度しかなく、特段残らなければならない理由がない限りはフィッシャー氏は74歳という高齢でもあり、可能性は低いとみられる。

フィッシャー副議長の発言によって、今年はあと2回の利上げが予想されるが、問題はそのタイミングとなろう。今後FOMCの日程は以下の通り。

May 2-3 (Tuesday-Wednesday)

June 13-14 (Tuesday-Wednesday)

July 25-26 (Tuesday-Wednesday)

September 19-20 (Tuesday-Wednesday)

October 31-November 1 (Tuesday-Wednesday)

December 12-13 (Tuesday-Wednesday)

6月、9月、12月のFOMC後に議長会見が予定されている。これまでの3回の利上げ(2015年12月、2016年12月、2017年3月)はいずれも議長会見が予定されているFOMCで決定されている。このため、6月、9月、12月のうちのいずれか2回がターゲットとなろう。4、5月のフランス大統領選挙の結果を受けてユーロに対するリスクが高まらなければ、6月のFOMCでの利上げの可能性も意外に高いのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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