日本の物価を左右する原油価格の行方
石油輸出国機構(OPEC)は30日の総会でリビアとナイジェリアを除く全加盟国が原油生産量を4.0~4.5%減らすアルジェリアの提案について協議する見通しとなっている。この総会で8年ぶりとなる減産合意が可能なのかが焦点となっている。
いまのところ、協議ではイラン、イラク、インドネシアが難色を示していると指摘されている。実際に今月22日の専門家会合ではイランとイラクが減産に難色を示し、供給制限の詳細がまとまらなかった。
ところが23日にイラクのアバディ首相は「イラクは価格安定のため減産する」と表明し、OPECの減産に参加する意向を示した。合意実行は難しいとされてきたが、合意の可能性も出てきた。
主要産油国でもあるロシアのプーチン大統領は今月、凍結の準備は整っているとの認識を示したものの、増産凍結をどのように行うかについて決めかねているとの観測もある。
このように30日に減産合意が可能なのかどうかは、依然として不透明である。しかし減産合意となれば、原油価格があらためて上昇してくる可能性がある。
原油価格についてはWTI先物がいわゆるベンチマークとなっている。WTIは今年に入ってからの中国など新興国の経済成長の鈍化などを嫌気して、一時30ドル割れまで下落した。ここでいったん底打ちとなり、50ドル台を回復した。しかしここから上が重くなり、ここにきて50ドル近辺での推移が続いている。
30日のOPEC総会で減産合意となればWTIはもみあいから脱し、トランプラリーとなっている金融市場の動きと相まって、60ドルあたりまで回復する可能性はある。合意とならずとも、米国経済成長の期待などから大きく下がることも考えづらい。50ドル近辺でのもみあいが継続すると予想される。
いずれにしても原油価格の下落傾向は止まったとみて良いかと思われる。どこまで回復するのかは不透明ながら、これは原油価格の動向に影響を受けやすい日本の物価に対して下方圧力の後退を意味しよう。
外為市場では円安が進行し輸入物価の上昇による物価への上昇鬱力も加わり、マイナスに落ち込んでいる日本の物価は(10月のコア全国消費者物価指数は前年比マイナス0.4%)今後次第にプラス圏に転じてくることが予想される。