日銀の物価見通しのおかしな点

(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

日銀は4月27、28日に開催された金融政策決定会合の議事要旨を公表した。物価の基調的な動きに関して下記のような記述があった。

「委員は、需給ギャップや予想物価上昇率の動向を踏まえると、物価の基調は着実に改善しているとの見方を共有した。」

さて、ここで私の知り合いが面白い指摘をしていた。1年前の決定会合議事要旨を今回の議事要旨を確認すると中身があまり変わっていないという。試しに今回と昨年の同時期に公表された2015年5月開催の決定会合議事要旨を特に今後の予想物価上昇率に関するところで確認してみた。

今回、「大方の委員は、消費者物価の前年比は、物価の基調が着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていく、2%程度に達する時期は、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2017年度中になる、その後は、平均的にみて、2%程度で推移する、との見方を共有した。」(2016年4月開催分の決定会合議事要旨より)  1年前、「委員は、予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとの認識を共有した。そのうえで、多くの委員は、先行き、物価の基調を規定する需給ギャップは着実に改善し、予想物価上昇率も高まっていくことから、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価は伸び率を高め、2016年度前半頃に2%程度に達する可能性が高いとの見方を共有した。」(2015年5月開催分の決定会合議事要旨より)

需給ギャップや予想物価上昇率に関しては、2013年4月の量的・質的緩和と2014年10月のその拡大により、着実に改善しているとの前提のようだが、現実の物価はいっこうに改善してはいない。その理由として昨年も今年も原油価格の下落を指摘している。これは裏を返せば物価は需給ギャップや予想物価上昇率などよりも、原油価格の動向に左右されるということを示しているということになるのではなかろうか。

原油先物価格でみると2015年5月のWTIは60ドル前後、今年4月は40ドル前後にいた。確かに原油価格は低迷が続いている。これが2014年の頃のように100ドル台に戻れば、2014年4月のコアCPIの前年比プラス1.5%程度に戻ると日銀は読んでいるということであろうか。しかし、仮にそうであるとしてもこれに需給ギャップや予想物価上昇率の改善とかは、さほど関連性はなくなるのではなかろうか。

しかも2014月4月のコアCPIの1.5%まで上昇は、アベノミクスをひとつのきっかけとした急激な円安効果が背景にあり、そこに消費増税前の駆け込み需要や値上げ等が影響するという別の現実的な側面があったはずである。それを無視して原油価格さえ戻れば2%の物価目標を達成できるとするのはあまりに無理があるように思われるのだが。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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