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来年度は長期国債発行額をほぼ日銀が買入れ

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

12月24日に政府は来年度予算案を閣議決定した。2016年度予算案は一般会計の総額で96兆7218億円程度と、2015年度の当初予算を3799億円程度上回り、過去最大となる。このうち国債費は1614億円増加し23兆6121億円となる。想定された長期金利は今年度の1.8%から1.6%に引き下げられたが、国債残高の増加により国債費は増加した。歳入では税収今年度当初より3兆円程度増えて、57兆6040億円と1991年度以来の高い水準となった。

新規国債の発行額は34兆4320億円となり、今年度当初から2兆4310億円の減額となった。これにより歳入全体に占める国債の割合は35.6%程度と今年度当初の38.3%から低下はするが高い水準にあることも確かである。

借換債が今年度当初から7兆1841億円減額されるが、財投債が2兆5000億円増額されることなどから、来年度の国債総発行額は162兆2028億円となる。このうち入札等で発行されるカレンダーベースの国債発行額は147兆円ちょうどとなった。 今年度当初に比べると5兆6000億円の減額となる。ちなみに来年度の前倒債の発行限度額は48兆円(今年度の32兆円から大幅増額)となっており、前倒債はかなり積み上がっていることも確かである。

カレンダーベースの年限別の国債発行額をみると、40年債が今年度当初の4000億円が5回から、来年度は4000億円が6回と増額される。30年債は8000億円が12回と変わらず。20年債は今年度の1.2兆円が12回から1.1兆円が12回に減額、10年債は2.4兆円が12回と変わらず、5年債は今年度の2.5兆円12回が2.4兆円12回に減額され、2年債は2.5兆円12回から2.3兆円12回に減額される。1年物短期国債も都合1.2兆円減額となる。10年物物価連動国債と流動性供給入札は変わらずとなる。これらはほぼ国債市場特別参加者会合などでの参加者からの意見を組み入れた格好となった。

本来であればそれぞれの年限での消化に関して投資家の需要などを考慮して、その影響を考える必要があったが、日銀の異次元緩和による大量の国債買入で、考慮すべきはこの日銀の買入との兼ね合いになるという、何ともおかしな状況にいまはある。

来年度に日銀が買い入れる国債の金額は、日銀が目指す年間保有額の増加ペースの80兆円と償還分の40兆円の都合約120兆円である。来年度のカレンダーベースの国債発行額は、短期国債の25兆円を除くと122兆円となる。つまり日銀はカレンダーベースでの長期国債発行額をほぼ買い入れるが、かろうじて100%は割り込む格好となる。もちろん追加緩和での国債買入増があると話は違ってくるのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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