五代友厚が設立した証券取引所

(写真:アフロ)

大阪取引所の見学者が急増しているそうである。大阪取引所には連続テレビ小説「あさが来た」の登場人物である五代友厚の銅像がエントランス前に立っており、ギャラリーには五代が署名した設立趣意書なども展示されており、このあたりが女性ファンのお目当てとなっているようである(産経新聞の記事より一部引用)。

なぜここに五代友厚の像があるのかといえば、五代は堂島米会所を復興するとともに、株式取引所条例の成立を受けて、自ら大阪証券取引所の前身である大阪株式取引所の発起人となり、その設立に尽力したためである(大阪取引所のサイトより一部引用)

そもそも証券取引所とは何か。ここは主に株式や債券など証券の売買取引を行うための場所であり、資本主義経済における中心的な役割を果たしている。証券取引所は、投資家や証券会社自身の株式などの売買注文を市場に集中させることにより、大量の取引を可能にさせ、市場の流動性を高めるとともに、公正な価格形成を図るということが可能となっている。投資家は証券取引所で自らが直接取引を行うことはできない。会員である証券会社を通じて取引を行わなければならない。証券取引所における取引においては、大量の売買注文を公正かつ円滑に執行するために、取引時間、値段を指定する方法、取引単位、決済方法などについての細かな規定が定められている。また、売買は基本的に競争売買によって行われている。

この取引所の起源は意外と古い。欧州では金融・貿易の一大拠点として繁栄したブリュージュに変わり、アントワープがヨーロッパの商業拠点となり、喜望峰周りのインド航路の発見によりその繁栄は支えられた。このアントワープ(アントウェルペン)に1531年、現在のようなかたちの証券取引所が歴史上初めて設立されたとされる。

ブリュージュにおける手形の取引所をモデルにしてつくられたとされるアントウェルペン取引所では、手形や商品などの取引が行なわれていた。ここでは現金による決済以外にすでに商品のオプション取引に対する契約も扱っていた。このオプションは現在のデリバティブ取引と同様に、ヘッジとともに投機としても使われた。さらに債券を取引する第二市場も現れたのである。

アントウェルペン取引所の銘板には「国籍と言語の如何を問わず、すべての商人に役立てるために」とあるそうで、交易の自由が保証され、イギリスやポルトガルなどヨーロッパ各国が商館や駐在員を配置し、資金調達などを行っていた。またアントウェルペンでは「アントウェルペン慣習法集成」という商法も制定され、この商法がオランダの東インド会社の設立に大きな影響を与えたと言われている。また、アントワープでは船舶の売買に加え海上保険といった取引も盛んに行われ、ヨーロッパ最大の商業・金融の中心地となっていった。

アントウェルペン取引所の取引で一躍有名になった人物がいる。それが「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉でも有名なトーマス・グレシャムである。グレシャムはイギリス王室から海外負債管理の任務を託され、アントウェルペンに派遣された。アントウェルペン取引所において商才というか相場師の才能を発揮し、スペイン金の投機で成功し、イギリスの海外負債の大部分を清算したそうである。その結果、1559年にはエリザベス1世からナイトの称号を与えられた。

アントウェルペン取引所の運営に目をつけたグレシャム卿は、ロンドンに戻ってから同様の取引所を設立し、それが王立取引所と改称され、イギリスにおける取引所の始まりになる。

世界最初の取引所といわれている16世紀のアントウェルペン取引所では、すでにオプション取引や先渡し取引が行われていたが、現在の形式での先物取引などのデリバティブ取引の原型となっていたのは、江戸時代の大阪堂島で行われた米の先物取引であった。それがルーツとなり、現在、大阪取引所では日経平均先物や債券先物などのデリバティブ取引を主に取り扱っている。

1874年に株式取引条例が制定された。1878年5月に渋沢栄一らが東京株式取引所を設立したが、1878年6月に五代友厚が発起人となって設立したのが大阪株式取引所であった。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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