イングランド銀行のスーパーサーズデー
英国の中央銀行であるイングランド銀行は8月5日と6日に金融政策委員会(MPC)を開いた。今回からイングランド銀行のカーニー総裁は金融政策の透明性向上のため画期的な手段を用いた。
ロンドン時間正午(日本時間午後8時)にイングランド銀行は8月の金利に関する決定 と採決の内訳を議事要旨で即時に公表し、四半期物価報告なども同時に公表したのである。このため市場ではこの日を「スーパーサーズデー」、「メガサーズデー」、「ブロックバスターサーズデー」などと呼称していた。
日銀やFRBの議事要旨の発表はそれぞれ約1か月程度あとに発表されているが、イングランド銀行は即時公表に踏み切った。なおイングランド銀行での金融政策における採決は2日にわたるMPCの初日にすでに実施されている。
今回のMPCでは8対1で政策金利を0.50%に、資産買い取りプログラムの規模を3750億ポンドと据え置くことを決定した。政策金利については、将来の利上げに向けた地均しの意味でも複数人が利上げを主張して反対するのではと予想されていたが、結局、利上げを主張し反対票を投じたのはマカファティー委員だけとなった。それでもMPCでの利上げ票は昨年12月以来となる。
現在のMPCのメンバーはカーニー総裁、ブロードベント副総裁、シャフィク副総裁、カンリフ副総裁、ホールデン委員、フォーブス委員、マイルズ委員、マカファティー委員、ウィール委員で構成されている。マカファティー委員とウィール委員がタカ派と目され、ハト派とされているマイルズ委員も利上げらは前向きとの見方がある。
同時に発表された物価報告では、今年のインフレ率見通しを平均で0.3%と予想し、5月時点に予測した0.6%から下方修正した。2016年の予想は平均で1.5%としている。公表文によると、ここ数か月のエネルギー価格の下落が、来年半ばあたりまで物価を抑える可能性が指摘されていた。このあたりが利上げに向けた姿勢をやや慎重化させていた可能性がある。利上げ時期の見通しについては委員の間では広がりもある。今回マカファティー委員は0.25%の利上げを主張していた。
この結果を受けて、早期の利上げの可能性を織り込んで買われていた英国ポンドが下落し、英国債は買われていた。ただし、英国の長期金利低下はWTIが44ドル台に下落したことによる米国の長期金利の低下の影響も受けていたとみられる。英国債のこの動きをみても、利上げ観測と原油安による物価の低迷が綱引きとなり、長期金利はなかなか上昇しづらい状況が続くものとみられる。