ギリシャの次に気になるイベント
ギリシャのデフォルトやユーロ離脱の懸念は後退し、市場はあらたな材料を模索しつつある。なかでもFRBの利上げのタイミングなどが次の焦点となりそうだが、ほかにも今後注意すべきイベントがいくつかある。
FRBの正常化(利上げ)のタイミングについては7月28、29日のFOMCの動向も確認したいが、可能性とすれば議長会見の予定されている9月か12月のFOMCでの決定が予想される。9月か12月かについては市場参加者の見方も分かれている。個人的には前任のバーナンキ議長のテーパリング決定の事例にならい12月のFOMCでの決定の可能性が高いとみている。その後の利上げのペースはそれほど急がないであろう。ここにきて再び原油価格が下落するなど、物価の上昇圧力が抑制されていることもあり、半年の一度程度の利上げペースとなるのではなかろうか。もちろん経済情勢次第の面はあるが。
FRBと時を合わせて、イングランド銀行も正常化に向けた動きを再び始めている。イングランド銀行のカーニー総裁は7月14日に経済の状況を踏まえると利上げを開始する時期が近づいていると言明した。16日には利上げ時期の決定が早ければ年末ごろになると示唆している。金融政策委員会のマイルズ委員も利上げの時期は近いと語っている。MPCは来年から年8回の開催となる予定だが、今年は毎月開催されている。年末までに利上げを決定してくる可能性は高そうである。
年内のFOMC、MPCでの利上げの可能性は高く、その後もペースは緩やかながら利上げが継続されるとみている。これに対してECBは2016年の9月まで量的緩和を継続するとしている。日銀も出口すら議論できない状況にあり、IMFからは追加緩和の準備を要請されているぐらいである。ただし、ギリシャへの懸念が後退すればECBが国債を大きく買い入れる必要性も薄れてくる。日本も異常な金融緩和を続けなければいけない状況にあるとも思えず、今後はこの矛盾とともに、FRBとBOE・日銀とECBの方向性の違いが外為市場や債券市場を通じて市場を錯乱する要因ともなりうる。
そして、ここにきて再び下落基調になりつつある原油価格の動向にも注意が必要になる。米国の生産は減らず、OPECは原油を増産し、中国の需要への不安などが要因となって、WTIは50ドルを再び割り込み、低下圧力を強めつつある。これは物価の上昇の抑制要因となるが、日銀にとっては物価目標達成を難しくさせかねない。日銀は政策目標なり、物価目標なりを修正させる必要も出てくるのではなかろうか。
原油価格下落の要因ともなっている中国経済の減速も要注意となる。中国ばかりでなく、ブラジルやロシアなど新興国の景気の低迷が、あらたな不安要因となる懸念もある。
安倍政権の行方についても懸念材料となってきた。安保法案を巡って内閣支持率が低下してきており、株高だけでは支持率を支えられなくなっている。今年9月には自民党総裁選を控え、さらに2016年7月の参院選の動向も注目される。国内では政局の行方も波乱要因となる可能性が出てきている。
政局と絡み、2017年4月の消費増税の行方も気掛かり。そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、国内景気への影響とともに、財政への影響も懸念される可能性がある。戦後、日本で初めて国債を発行せざるを得なくなったのは1964年の東京オリンピック開催が大きな要因となっていた。