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日本と中国の米国債保有高が接近

久保田博幸金融アナリスト

ゆうちょ銀行とかんぽ生命は日本国債の保有高を減少させて米国債主体の外国債券の保有額を増加させている。GPIFも国内債を減らして株式や外国債券の比重を高めている。この結果、国別の米国債保有高において日本が再びトップの中国に接近しつつある、とのご指摘をいただいたので、あらためて確認してみた。

久しぶりに米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)を確認してみたところ、確かに日本と中国の米国債保有額が接近しつつある。

2014年12月の上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)。中国(China, Mainland)1244.3 、日本(Japan)1230.9、ベルギー(Belgium)335.4、カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs)333.2、石油輸出国(Oil Exporters)285.9、ブラジル(Brazil)255.8、スイス(Switzerland)190.1、英国(United Kingdom)189.2、台湾(Taiwan)174.4、香港(Hong Kong)172.6。

3位のベルギーはルクセンブルグに本社を置く清算機関ユーロクリアにロシアなどが保有する米国債を預けているのではとの観測がある。カリブ海の金融センターや英国が上位にきているのは、ヘッジファンドなどが資金の逃避先として米国債を購入していることも影響しているのではないかと思われる。石油輸出国については、原油価格の下落による影響が今後出てるのかも注意したい。

中国は2013年12月の1270.1ドルから2014年12月に1244.3に減少し、日本は同1182.5から1230.9に増加している。日中の米国債保有額の差は2014年12月が13.4だったが、11月は8.9まで縮まっていた(単位は10億ドル)。

GPIFの運用方針の変更とそれによる共済年金なども同様に、国債から米国債などへの資金シフトが進むとみられ、ゆうちょ銀行やかんぽ生命ばかりでなく、他の生保なども利回りの低い国内債から米国債などへの資金シフトが継続することも予想される。

FRBは年内にも利上げを実施し、その後保有する米国債やMBSの残高も減少させていくことが予想される。その大きな受け皿のひとつに日本の投資家がなり、その結果、米国債保有残高を減少させている中国に変わり、いずれ日本が米国債の保有額の最大手に返り咲くことが予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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