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5月は債券を都銀が買い越し、信託銀行は売り越し

久保田博幸金融アナリスト

6月20日に日本証券業協会が発表した5月の公社債投資家別売買高(除く短期債)によると、都銀は4100億円の買い越しとなった。都銀の買い越しは3か月ぶりとなったが、4月は3兆7058億円もの売り越しとなっていた。このため、5月はポジション調整のための買いを入れてきた可能性がある。

買い越しで大きかったのは外国人で1兆1634億円の買い越し。信託銀行は2631億円の売り越しとなったが、売り越しは2012年10月以来。業態別の公社債投資家別売買高(除く短期債)は以下の通り。

公社債投資家別売買高(除く短期債)、単位は億円(マイナスは売り越し)

都市銀行 4100、地方銀行 6042、信託銀行-2631、農林系金融機関 1171、第二地銀協加盟行 111、信用金庫 2453、その他金融機関 1489、生保・損保 4718、投資信託 5701、官公庁共済組合-181、事業法人 1157、その他法人 1335、外国人 11634、個人-297、その他-31840、債券ディーラー 1139

国債投資家別売買高をみると、都銀は中期債を5875億円買い越しており、中期ゾーン主体に少しポジションを積み上げた格好に。

これに対して信託銀行は中期債を4178億円、長期債を1876億円の売り越し、超長期債は2611億円の買い越しとなっていた。公的年金改革を意識し、国債のポジションを圧縮してきた可能性がある。

外国人は中期債を7987億円、長期債を1841億円、超長期債を1727億円と満遍なく買い越しとなっている。さらに短期債も17兆1147億円の買い越しと買越額は、4月の14兆7455億円の買越額から増加している。海外投資家は、ECBの追加緩和期待による欧米の国債買いとともに日本国債にも買いを入れてきたものと思われる。

都銀が持つ国債のポジションについては、担保としても必要な分もあるため、一定額保有する必要があり、ある程度のポジションは維持してくると思われるが、信託銀行については今後、ポジションをさらに減少させてくることも予想される。

他の業種は生損保を含め全般に買い越しとなり、日銀の買入とともに債券相場を支える格好となった。ただし、高値警戒もあり買い進むというよりも、押し目では着実に買いを入れているものと思われる。これにより債券の膠着相場が形成されているとみられ、この構図は、何かしらの大きな材料が出ない限りは崩れることは考えづらい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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