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都銀は9か月連続で国債を売り越し

久保田博幸金融アナリスト

20日に日本証券業協会が発表した12月の公社債投資家別売買高(除く短期証券)によると、4月から11月まで売り越しとなっていた都市銀行は12月も1兆9906億円もの売り越しとなっていた。都銀の売り越しは異次元緩和決定の4月以来、9か月連続となる。

この公社債投資家別売買高を見る際にはいくつか注意すべき点がある。そのひとつに、この都銀分には都銀が直接、国債入札で落とした分は含まれていないことがある。発表している証券業協会のサイトには、国債の投資家別売買高の集計に関する解説資料のなかに次のような指摘がある。

「協会員から、本店、支店及びその他の営業所における、当月中に取り扱った国債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、発行日前取引を含みます)の状況について、売買 の主体である投資家別に報告を求め、集計しています。 特別会員については、登録金融機関業務に係る取扱いについてのみ報告を求めております。」

この集計はあくまで証券会社を通じて行った売買高が集計されている。都銀などは特別会員として参加しているが、都銀の扱い分は登録金融機関業務に係る取扱いのみとなっている。

国債入札に関して、具体的にどこが落札したのかは公表されていない。記事などで報じられるものは、証券会社などにヒアリングして集計したものであり、外資系の一部大手などが公表しないなど、完全なものではない。都銀や生保は国債入札で証券会社等を通さずに直接落とすことも良くあるとされるが、これについても入札を担当している財務省や日銀の関係者など以外はわからない仕組みになっている。

このように都銀については、直接国債を入札で落とした分を含めると、9か月連続の売り超しとなっていたのかどうかは不明ながら、ポジションを落としていることは確かだと思われる。

12月分については都銀以外の機関投資家はほぼ買い越しとなっていた。地方銀行が4202億円、信託銀行が6048億円、農林系金融機関が6290億円、第二地銀が2190億円、信用金庫が8662億円、その他金融機関が8259億円、生損保が1兆2448億円、投資信託が6071億円、事業法人が1286億円のそれぞれ買い越し。外国人は10億円の買い越し。

国債の投資家別売買高から内訳をみると、都市銀行は中期債を1兆6834億円売り越していた。買い越しについては、地銀は中長期債主体、信託銀行は超長期と中期、農林系はまんべんなく、第二地銀は中長期主体、信金は長期主体、その他金融は中期債主体、生損保は超長期主体、投信は中期主体、事業会社も中期主体のそれぞれ買い越しに。外国人投資家は超長期と長期を売って、中期を買っていた格好に。

ここでも注意すべきは、超長期、長期、中期の区分はあくまで入札時のものであり、10年の長期債も発行して7年経過して残存3年債となっても、中期債ではなく長期債としてカウントされる点である。ただし、売買の中心は直近に入札されたカレントものと呼ばれるものの割合が大きいことで、おおよその動きはこの集計から掴めることも確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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