テーパリング開始後のFRB
12月17日、18日に開催されたFOMCにおいて、量的緩和政策の縮小、いわゆるテーパリングの開始を9対1の賛成多数で決定した。ローゼングレン・ボストン連銀総裁が時期尚早と反対した。来年1月から月額850億ドル規模の証券購入額を100億ドル減らし750億ドルとする。内訳としては米国債の買入は450億ドルから400億ドルに、エージェンシー発行モーゲージ債(MBS)は400億ドルから350億ドルに減額する。
来年1月末でバーナンキ議長の退任が決まっており、後任の議長にはイエレン副議長が就任する予定である。
ラスキン理事はオバマ大統領が財務副長官に指名している。米上院財政委員会は13日にラスキン理事の財務副長官指名を承認し、近く行われる上院本会議での採決で正式に承認される見通し。
パウエル理事の任期も来年1月に終了するが、こちらは大統領が再指名するとみられている。この理事のポストには、11月8日に退任したブレイナード財務次官(国際問題担当)が指名されるのではないかとの見方もあるが、まだはっきりしていない。 イエレン副議長の最有力候補にはスタンレー・フィッシャー氏の名前が挙がっている。
このようにFRBは理事の交代を控えているが、FOMCのメンバーのうち連銀の代表も年を越すと入れ替わる。FOMCで投票権を持つ地区連銀総裁は、2013年がセントルイス、シカゴ、カンザスシティ、ボストンの各総裁となっていたが、2014年はクリーブランド連銀のピアナルト総裁、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁、ダラス連銀のフィッシャー総裁、ミネアポリスのコチャラコタ連銀総裁に代わる。
このFRBの人事の変更も年内のテーパリング開始の決定に少なからず影響を与えていたのではないかと考えられる。もちろんバーナンキ議長としては、自ら行ってきた極端な金融緩和策をそろそろ打ち止めとして、通常の金融政策に戻そうとの意識も強かったのではなかろうか。
バーナンキ議長は2006年2月1日に就任したが、就任後の6月のFOMCまで3回連続で利上げを決定してきた。これにより、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標は5.25%まで引き上げられていた。前任のグリーンスパン議長が利上げ局面に入ったのは2004年6月で、FOMCはそれから2年間にわたり慎重なペース(Measured Pace)で17回の会合で毎回0.25ポイントずつ小刻みな利上げを継続していた。
その利上げが打ち止めになった原因は、2006年5月あたりから住宅価格が下落に転じたことによる。ここからサププライム・ショックが発生し、リーマン・ショックへと波及することになる。その後の欧州の信用不安も加わり、FRBは7年半ものあいだ追加緩和策を実施してきており、今回やっとその方向を変えることができた。
今後の債券買入の縮小については、in further measured stepsで実施するとしているが、特に大きな危機が発生するようなことがなければ、淡々と国債買入の金額を縮小させてこよう。その後、膨らんだ資産をどう処分してくるのかに焦点が移る。こちらも慎重に行うと予想され、インフレ懸念などの強まりでもない限り、償還分の乗換を行わないといった形である程度資産も減少させていくことが予想される。その上で、雇用をはじめとする経済指標や物価の動向を確認して、最後のステップである利上げに向かうと予想される。