FRB議長にイエレン氏を指名、初の女性議長誕生か
オバマ大統領は9日にイエレン副議長をFRB議長に指名した。議会上院の承認が得られれば、イエレン氏は来年2月から初めての女性のFRB議長となる。
米国の中央銀行である連邦準備(制度)理事会(Federal Reserve Board)は、大統領が任命し「上院の承認」を受けた7名の理事から構成される。議長と副議長の任期は4年となっている。バーナンキ議長の任期は来年1月末まで。
今年の9月15日にサマーズ元米財務長官がFRB次期議長の指名を辞退した。オバマ大統領は当初、サマーズ氏を指名するつもりでいたようだが、民主党上院議員のなかで、上院銀行委員会に所属しハーバード大学教授であったエリザベス・ウォーレン議員が反対を表明していた。それに同調する民主党内の反対議員が複数名となり、オバマ大統領は指名をあきらめ、サマーズ氏が自ら指名を事態する意向を示したとみられる。イエレン氏に関しては、上院では議長承認に必要な60票を確保できる見通し。
これを書いている時点では、副議長については特に名前が挙がっていない。ちなみに9月にサマーズ氏が議長に指名かと伝えられた際には、副議長に女性のラエル・ブレイナード財務次官(国際担当)を起用する意向と伝えられた。議長・副議長ともに女性となれば、まさに画期的なことになるが、さすがにその可能性は薄いのかもしれない。
米国では大統領に次ぐ影響力を持つとされるFRB議長だけに、市場もその人事の動向にはかなり注目していた。できればタカ派とされるサマーズ氏より、現在の量的緩和政策をバーナンキ議長と共に推進してきたイエレン氏が適任との意見も多かった。イエレン氏を指名との報道は市場も好感するとみられる。
ただし、FRBの今後については前途多難である。9月に開始されるとみられていたテーパリングは開始されなかった。その要因として挙げられていた連邦政府の債務上限問題は深刻化し、デフォルトの懸念すら出てきており、結果とすればテーパリングの見送りは適切な判断であったともいえる。しかし、市場との対話という意味では大きな懸念も生じたことも確かである。
イエレン氏は失業問題が専門の経済学者で、FRB理事やクリントン政権の大統領経済諮問委員会(CEA)委員長、サンフランシスコ連銀総裁を経て2010年からFRB副議長となった。ご主人は2001年のノーベル経済学賞受賞者であるジョージ・アカロフ氏(日経新聞電子版を参照)。
イエレン氏はハト派とされるが、日本でいうところのリフレ派などとは異なる。バーナンキ議長が任期中に出口に向けての舵取りを行い、それをイエレン氏が受け継ぐ格好になる。専門の雇用面などに目配せしながら、慎重に出口政策を行ってくると予想される。ただし、そのスピードはオバマ大統領がサマーズ氏に期待していたほどの速さはないのかもしれない。