シカゴ小麦先物相場が、2008年3月以来となる14年ぶりの高値を更新している。中心限月だと、年初の1Bu=774.00セントに対して、2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まってからは連日のようにストップ高張り付きの急伸地合を形成し、現在は1,209.00セントまで値上がりしている。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシアとウクライナ両国からの小麦供給に障害が発生している影響だ。ウクライナが戦闘状態に陥る中、同国では穀物の輸出業務が停止したことに加えて、黒海における穀物輸送船の運航も困難になっている。しかも、各国が対ロシア経済制裁に踏み切っていることで、ロシア産小麦が国際市場から長期にわたって排除されるリスクも浮上している。

ロシアとウクライナはともに北半球における主要な小麦生産・輸出国であり、米農務省(USDA)の推計だと、世界生産高の14.0%、輸出高の28.5%のシェアを有している。両国の小麦供給環境に混乱が生じている以上、需要家は欧州や豪州産といった他の生産国からの調達に切り替える可能性を検討せざるを得ず、ウクライナとロシア以外でも小麦需給の不安定化が強く警戒される状況になっている。

しかも、3月4日のアジア時間にはウクライナ南東部にあるザポリージャ原子力発電所がロシア軍の攻撃を受け、施設内で火災が発生したことが更に緊張感を高めた。国際原子力機関(IAEA)は、「放射能レベルに変化ないと(ウクライナ政府から)報告を受けている」ことを明らかにしているが、もし原子力発電所が攻撃によって被害を受ければ、「深刻な危険」が生じるとの警告も行っている。

世界の主要な穀倉地帯であるウクライナにおいて放射能汚染が発生すると、同国の小麦やトウモロコシ、ヒマワリ油などの生産に大きな被害が生じ、今後数年にわたってウクライナ産穀物が国際市場から排除される可能性も警戒される。ロシア軍の攻撃が僅かにズレて放射性物質が漏れていたら、世界の食料需給環境が一変してしまう可能性もあったのだ。

ロシア軍によるウクライナの原子力発電所の攻撃は、一見すると遠い世界の話にも見えるが、実は小麦粉や植物油、食肉など広範囲の食料価格が一段と暴騰しかねない瀬戸際の危機的状況にあった。株価急落など金融市場に緊張が走ったが、それと同時に穀物市場も冷や汗をかいていた。

このままウクライナにおける戦闘状態が続くと、2022/23年度産の作付けができずに回復不能の生産障害が発生する可能性もある。小麦相場が14年ぶりの高値を更新して過去最高値に迫る動きを見せているのは、これ以上の混乱状態には耐えられないとの警告と深刻に受け止める必要があろう。早期にウクライナ情勢を鎮静化させないと、食料価格高騰に留まらず、途上国における飢餓発生といった一段と深刻な事態を引き起こしかねない。