マイナス価格の衝撃から1カ月、原油価格はどうなった?

(写真:ロイター/アフロ)

NY原油先物価格は、4月20日に1バレル=マイナス40.32を付けたことが大きなニュースになったが、それから間もなく1カ月が経過しようとしている。

新型コロナウイルスによる需要ショック、更には石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産体制の終了、NY原油先物の受け渡し場所であるオクラホマ州クッシング地区の貯蔵能力限界など、複数の要因が重なったことが、売り手が買い手に対してお金を支払うことで原油を引き取ってもらう異常な状態を作り出した。しかし、その後の原油価格は総じて安定的に安値修正を進める展開になっている。

6月に受け渡しが行われる6月限の取引に関しては、一度もマイナス価格に陥ることなく、5月18日には30ドル台を回復する展開になっている。新型コロナウイルスの感染被害が広がる前の50ドル台から大きく値下りした状態に変化はみられないが、原油価格が極めて緩やかなペースではあるものの、通常の取引環境に回帰しつつあることが確認できる。

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最大の要因は、新型コロナウイルスの需要環境に対するショックが、想定よりも早く解消に向かっていることだ。新型コロナウイルスは各国で外出・移動規制の導入を迫り、ガソリンやディーゼル、ジェット燃料といった輸送用エネルギー需要の急激な減少を促した。しかし、4月に入ってからは欧米で段階的に経済活動の正常化が打診されており、既に需要環境は最悪の状態を脱したとの安堵感が広がっている。

象徴的だったのは、国際エネルギー機関(IEA)が最新の5月月報において、2020年の世界石油需要見通しを4月時点の前年比日量930万バレル減から、860万バレル減まで、マイナス幅を縮小したことだ。過去最大規模の需要減少圧力に晒される見通しに変化はないが、1カ月前に想定されていたよりも欧米の経済活動が早期に正常化し、中国経済が回復し始めている影響が指摘されている。

また、供給サイドの変化も無視できない。OPECプラスは5月1日から世界の原油供給の約1割に相当する日量970万バレルを削減する協調減産を開始しているが、初期段階のデータでは高いレベルの合意遵守率が報告されている。サウジアラビアとUAE、クウェートは自主的に減産規模を積み増す動きも見せており、他産油国に対しても協調を呼びかけている。本来は、7月以降に減産規模を縮小する計画になっていたが、需給リバランスの流れを決定的にし、かつ、その流れを加速させるために、5~6月の減産規模をそのまま維持する議論も始まっている。

更に、米国やカナダなど協調減産に参加していない国々でも、大規模な減産圧力が報告されている。急激な原油安と需要環境の悪化を受けて、石油メジャー各社は2020年の投資計画を概ね3割程度削減する動きを見せている。IEAは、6月までにはOPECプラス以外で日量400万バレル規模の減産が行われるとの見通しを示している。

このまま需要環境の改善、OPECプラスの協調減産合意遵守、OPECプラス以外の産油国の減産が着実に進展すれば、年後半には需給バランスが供給「不足」に傾き、過剰在庫の取り崩しが開始されるとみられている。それでも、年前半に積み上がった在庫の全てを解消することは困難とみられているが、需給緩和状態がピークを脱し、正常化プロセスに移行しているとの見方が、原油相場の安値修正を促している。

ただ、過剰在庫の取り崩しを進めるプロセスは長期化する見通しであり、原油価格が過度に上昇すると減産圧力にブレーキが掛かるリスクも浮上することになる。今後も産油国の取組なくして原油需給・価格環境の安定化が実現することは困難であり、「需要環境の回復度合い」と「減産対応のニーズ」とのバランスが問われる地合が続くことになる。マイナス価格が実現してから約1カ月をかけて、30ドル台であれば需給リバランスの流れが阻害されることはないとのコンセンサスが形成され始めているのが現状である。