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サウジアラビアが産油国の緊急会合を要請、トランプ大統領の仲介成功か

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

トランプ米大統領は4月2日、サウジアラビアとロシアが原油の協調減産体制に回帰するとの見通しを示した。自身のTwitterにおいて、サウジアラビアのムハンマド皇太子と電話会談を行ったこと、そのムハンマド皇太子がロシアのプーチン大統領とも会談を行ったことも明らかにしている。

具体的には昨年の世界原油需要の約1割に相当する日量1,000万バレルかそれ以上の減産が行われることを期待、希望するとして、実現すれば石油・ガス産業にとってグレートだと投稿している。更には、減産幅が1,500万バレルに達する可能性も指摘し、全ての人にとって良い(グレートな)ニュースだと、自身のディール成功を誇示している。

サウジアラビア国営メディアもムハンマド皇太子とトランプ大統領の電話会談が行われ、サウジアラビアが石油輸出国機構(OPEC)プラスに対して緊急会合の開催を要請したと報じている。

■「価格戦争」終結に向けての第一歩になるか

3月6日のOPECプラス会合で追加減産を巡る協議がロシアの反対で破綻して以降、サウジアラビアは一切の協議を拒否して協調減産の期限が切れる4月1日以降の大規模増産の準備を進め、安価で大量の原油を市場に供給することで、自国のシェア拡大を目指す方針を鮮明にしていた。産油国の間でいわゆる「価格戦争(price war)」が展開されることへの恐怖心が、原油価格の急落を促していた。

しかし、原油相場急落が世界経済や金融市場、米国にとってはシェール産業に対する大きな脅威になる中、トランプ大統領が対立を深めるサウジアラビアとロシアとの間で仲介役を担った格好になる。

今後の焦点は、1)いつどのような形で緊急会合を開催できるのか、2)協調減産で合意できるのか、3)合意できるとすればどのような内容になるのか、4)その合意で新型コロナウイルスによる需要ショックをどこまで相殺できるのかなど、多岐にわたる。現時点でのファクト(事実)としては、トランプ大統領の仲介でOPECプラスの臨時会合開催の可能性が高まっていることだけであり、その先は全く見通すことができていない。

しかし、供給過剰の是正を「価格」のみならず「政策」でも働き掛けることが可能になれば、無理な原油安でシェールオイルなど高コスト原油の生産停止を迫る必要性は薄れることになる。現実問題として、需要が崩壊状態になる中で、産油国が協調しても原油需給バランスを安定化させるのは難しい。ただ、産油国が意図的に供給過剰状態を深刻化させる最悪の状態には終止符を打てる可能性が浮上していることが、原油価格の急伸を促している。

4月2日のNY原油先物価格は、1バレル当たりで前日比5.01ドル高の25.32ドルと、1日で24.7%の急伸地合になっている。同日の高値は27.39ドルであり、前日比では7.08ドル高(34.9%高)となっている。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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