原油相場でパニック売り続く、協調減産が無理ならシェールオイル潰し再開か

(写真:ロイター/アフロ)

NY原油先物価格が、週明け直後のアジア時間の取引で急落している。3月6日の取引でも1バレル当たりで前日比4.62ドル安の41.28ドルと急落していたが、週明け9日のアジアタイムには一時30.00ドル(前日比11.28ドル)まで更に大きく値下りし、2016年2月以来の安値を更新している。過去2営業日の下げ幅は最大で15.90ドルに達しており、週末を挟んで原油価格環境は一変したことが確認できる。完全なパニック状態に陥っている。

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背景にあるのは、石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産体制が崩壊したことで、OPECやロシアが政策転換を行い、本格的な増産が始まることに対する危機感である。6日にはOPECプラス会合が開催されたが、日量150万バレルの大規模な追加減産を主張するサウジアラビアなどOPEC加盟国と、市場シェアを重視して追加減産に難色を示すロシアなどOPEC非加盟国との溝が埋まらず、協議は決裂している。追加減産で合意できなかったのみならず、3月末が期限とされる協調減産体制の延長も合意できない最悪の結果に終わった(参考:原油価格が10%超の急落、OPECプラス会合が決裂)。

今後はOPECプラスがどのような産油政策を採用するのかが注目されていたが、週末に得られている情報からは、協調減産体制から市場シェア重視の増産政策に転換するリスクが強く警戒される状況にある。

OPECはまだ正式な対応を決めていないが、Reutersなど複数のメディアは、サウジアラビアが3月末以降は増産に踏み切る計画だと報じている。現在の産油量は日量970万バレル前後とみられるが、1,000万バレルを大きく上回る1,100万バレル近い水準まで一気に増産が進む可能性がある。

またサウジアラムコは、4月の公式販売価格(OSP)を7日に公表しているが、6~8ドルの引き下げを行っている。これは原油価格急落で当然の対応とも言えるが、サウジアラビアが価格防衛を放棄して、市場シェア拡大のために本格的な価格競争を仕掛けているのではないのかとの警戒感が広がっている。

仮にOPECプラスが「協調減産による需給管理」から「増産による市場シェア獲得」に政策の軸足をシフトするのであれば、それは2014年に当時100ドルを超えていた原油価格が、一時20ドル台まで急落した当時と同様の市場環境に回帰することを意味する。

協調減産による需給管理体制の維持が不可能であれば、市場シェア獲得のために価格競争を仕掛け、高コストのシェールオイルなどいわゆるタイトオイル産業の崩壊を促す形で、世界全体の供給水準を抑制しておくことが求められる。すなわち、「政策」ではなく「価格」によって需給バランスの安定化が模索される局面に移行する可能性が浮上している。

ダラス米地区連銀の調査によると、米石油会社が設備投資計画で想定している原油価格の中心は53.00~55.99ドルである。また、開発会社が利益を出せる原油価格の中心は50~54ドルであり、40ドルを下回っても利益を出せるとの回答は全体の僅か14%だった。

OPECとしては、意図せざる形でシェールオイル産業潰しの全面対決を強いられている。OPECとシェールオイル産業の勝者がどちらになるのか、「チキンレース」が再開されると、2016年2月に経験した26.05ドルも意識されるマーケット環境になる。そして、ハイイールド債で資金を借り入れた中小の米石油会社の経営破たんが本格化すると、新型コロナウイルスの直撃を受けている金融市場においては、新たな混乱の火種になる可能性も十分にある。