イランが米軍基地を攻撃、日本経済への影響は?

(写真:ロイター/アフロ)

米国防総省は7日、イラクにある米軍の駐留基地2か所が、イランから数十発の弾道ミサイルによる攻撃を受けたと発表した。1月3日に米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことに対する報復措置であり、今後の展開次第では米国とイランとの間で大規模な軍事衝突が発生する可能性もある。また、二国間の問題に留まらず中東情勢全体が不安定化する可能性も警戒される状況になっている。

日本からみれば遠く離れた中東地域での地政学リスクとも言えるが、直接的な影響が及ぶのが原油価格の高騰である。国際指標となるNY原油先物価格は、年初の1バレル=61.68ドルに対して、8日には一時65.65ドルまで、1週間にも満たない時間で6.4%の急騰となっている。

国内指標である東京商品取引所(TOCOM)のドバイ原油先物価格も、昨年末の1キロリットル=4万2,920円に対して、1月8日の取引では一時4万5,320円まで値上がりしている。これは、1リットル当たりの原油調達コストが、昨年末からの1週間で既に2.4円上昇していることを意味する。

■家計を直撃するガソリン価格高騰

米政府は昨年5月にイラン産原油の禁輸制裁を実施しており、仮にイランからの原油供給が滞ったとしても、世界の原油調達環境に大きな影響が生じる訳ではない。しかし、イラン革命防衛隊幹部は、中東からの海上原油輸送の要衝であるホルムズ海峡で艦船や石油タンカーの攻撃に踏み切る可能性も示唆している。更には、ホルムズ海峡そのものを封鎖するのではないかとの警戒感もあり、原油価格は急騰している。

ホルムズ海峡は、世界の原油供給の2割程度が通過する「チョーク・ポイント」と言われる要衝だが、日本の主な原油調達先であるサウジアラビア、UAE、カタール、クウェートなどが出荷する原油も、この地域を通過して日本に届けられる。民間、公的な石油備蓄制度が存在するため、原油が確保できなくなり、日本経済の活動が止まるといった事態は現実的ではない。ただ、原油価格の高騰だけでも大きなショックが想定される。

市民生活において目に見える影響が最も早く表れるのが、ガソリン価格だろう。指標とされるTOCOMのガソリン先物価格(期近物)は、昨年末の1キロリットル=5万9,200円から1月8日には6万2,400円まで値上がりしており、1週間で1リットル当たり3.20円の値上がりになっている。概ね2週間前後で国内のガソリン小売価格に対しても、目に見える形で上昇圧力が発生しよう。

資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」によると、昨年12月30日時点のレギュラーガソリン全国平均価格は1リットル=150.1円となっているが、このまま原油価格が高止まりするだけでも、150円台定着からじり高傾向が進むことになる。昨年は5月13日の週の150.4円が年間高値だったが、今年は1月中に昨年高値を上回る可能性も十分にある。

NY原油先物価格が70ドル台前半、TOCOMのガソリン先物価格が7万円台まで更に上昇すると、ガソリン小売価格の160円台乗せの可能性も浮上することになる。ガソリンの家計負担(2人以上世帯)だと、ガソリン価格が10%上昇すると、月505円、年6,060円程度の負担増になる計算になる。特にガソリン購入量は人口規模が小さい市町村ほど大きくなる傾向にあるため、公共交通機関を利用しづらい地方都市の家計にとっては、負担が拡大し易くなる。消費増税直後の影響もあり、ガソリン価格高騰は、個人消費にマイナスの影響を及ぼすことになる。

■企業収益環境への影響も避けられない

また、企業収益に対する影響も避けられないだろう。世界経済の動向と関係なく原油価格が高騰すれば、企業活動のコストは上昇し、収益に影響が出てくれば株主に対する配当、役職員の報酬などにもマイナスの影響が生じることになる。既に減速感が目立つ日本経済全体にとっても、大きなリスク要因になる。また、為替市場でリスク回避の動きから安全性の高いと評価されている円が買われていることも、輸出企業を中心に企業活動にダメージを与えることになる。

株価急落の逆資産効果の影響も無視できない。金融資産の中で大きく上昇しているのは、代表的な安全資産である金(ゴールド)のみであり、NY金先物価格は2013年3月以来の高値を更新している。TOCOMの金先物価格は上場来高値を更新しており、1グラム=5,500円を突破している。昨年9~12月は5,100~5,200円前後での取引が目立ったが、安全資産である金市場にマネーの退避が促されている局面は、金投資家以外にとっては好ましい状況とは言えない。