サウジの原油供給が中断、日本の市民生活への影響は?

(提供:Saudi Press Agency/ロイター/アフロ)

サウジアラビアで石油施設が攻撃を受け、原油価格が急騰している。サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は日量570万バレルの原油生産が中断されたと報告しているが、これは世界の原油生産高の約5%に相当する規模になる。

サウジアラビアは、大規模な生産能力を抱えて国際原油需給の安定化に寄与してきたが、少数の産油国に原油供給を依存する寡占市場の恐ろしさが露呈した格好になっている。現在、世界の原油供給は米国、サウジアラビア、ロシアの3カ国だけで42%をカバーしているが、その一角で大規模な供給障害が発生しているのが現状である。

■サウジは日本の最大原油輸入先

こうした動きは、日本の市民生活とも無縁ではない。日本は国内産油量が殆ど存在しないため、海外からの原油調達に障害が発生すると、直ちにその影響を受けるためだ。2018年度のデータだと、日本の輸入している原油は88.3%が中東からきているが、サウジアラビアが38.2%と圧倒的なシェアを有している。次いでアラブ首長国連邦(UAE)の25.4%、カタールの8.0%などが続くが、ほぼ全量を輸入に頼る原油の、最大調達先で大規模な供給障害が発生しているのだ。

現時点では、原油が足りなくなるといった最悪の事態が想定されている訳ではない。サウジアラビアは国内備蓄の出荷を進める予定であり、輸出障害は一時的との見方もある。また、仮に輸出障害が発生しても、石油輸出国機構(OPEC)の他加盟国やロシア、更には米国などの増産対応も可能な状態にある。更には、日本も含む各国はこうした有事に備えて石油備蓄制度を採用しており、日本の場合だと国家備蓄と民間備蓄を合わせて消費量の230日分を超える備蓄が用意されている。現状は、各国共に備蓄在庫の放出は必要ないと判断して、監視体制に留めているが、サウジアラビアの供給障害が深刻化した場合には、国際エネルギー機関(IEA)主導で備蓄在庫の協調放出が行われる余地も残している。

■原油高続くと、灯油価格も値上がりする

一方、より身近な影響は原油価格の高騰がガソリンや灯油価格の押し上げ要因につながる可能性があることだ。レギュラーガソリン小売価格の全国平均は、昨年10月29日時点の1リットル=160.0円をピークに、直近の今年9月9日時点では143.0円まで値下がりしている。世界経済の減速で原油調達コストが値下がりする中、秋の行楽シーズンには140円程度まで値下がりする可能性も浮上していたが、逆に値上がりが警戒される状況になっている。仮に、原油相場の急騰が一時的なものに留まれば、ガソリン価格には殆ど影響が生じない可能性もある。ただ、原油高が数週間単位で続いた場合には、150円台まで値上がりが進む可能性がある。

灯油についても、店頭価格の全国平均は昨年10月29日時点の18リットル(ポリタンク1本)=1,797円が、直近の9月9日時点では1,619円まで値下がりし、今年の冬の暖房コストは抑制される見通しだった。しかし、こちらも1,600円台後半から1,700円水準まで値上がりする可能性が浮上している。

また、ジェット燃料価格の値上がりが進めば航空機チケットのサーチャージ料金、重油価格の値上がりが進めばハウス栽培の野菜価格、更には電力料金などにも値上がり圧力が発生する可能性がある。日本経済に対するマイナスの影響も大きく、株価や円相場など資産価格への影響にも注目する必要がある。

画像
画像

■原油高への生活防衛は難しい

こうした原油高に対する生活防衛策のツールは、必ずしも多くない。世界経済も容易に対処できる問題ではなく、だからこそ世界は原油価格の高騰に慌てている。安全資産である金価格が瞬間的に急伸したのも、中東の地政学環境の不安定化を警戒しただけではなく、経済活動へのダメージを警戒した結果である。

長期的には、供給サイドに多くの不確実性を抱えた石油に依存しない生活が答えになるが、脱石油化が簡単に実現しないことには、メリットを相殺するデメリットの存在がある。例えば、電気自動車は航続可能距離や充電時間、価格などに多くの問題を抱えている。暖房用器具も、現状では石油と電気で同じ性能を確保することは難しい。千葉県の大規模停電で露呈したように、石油から電気への依存が最適な答えなのかも分からない。天然ガスも石油を代替するのは容易ではない。原油価格が急騰したから、慌てて対策を考えるような問題ではない。

サウジアラビアの供給トラブルは、完全復旧までに数週間から数か月が見込まれるなど、まだ今後の復旧の目途もたっていない状況にある。現状では、早急にサウジアラビアの原油供給体制が正常化することを期待する以外に、有効な生活防衛策はないのかもしれない。