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11月はダウ平均株価の買い場? ~ハロウィン戦略~

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

今年も10月31日のハロウィンが終わったが、投資の世界では売買戦略として「ハロウィン・ストラテジー(ハロウィン戦略)」というものがある。5月1日からハロウィンの10月31日までは株式投資を休憩し、ハロウィン翌日の11月1日に投資を再開し、翌年の4月末に再び投資を休憩するというものである(※他の定義もあり)。即ち、株式投資における「11月1日買い→4月末売り」という6カ月に売買期間を限定した投資手法である。

このような投資戦略の背景にあるのは、一つは「5月に株を売れ(Sell in May)」という相場格言である。5月は株価が下落する可能性が高い月と言われており、まずはこの5月を迎える前の4月末までに保有株を売却してしまおうというものである。

もう一つが、「10月効果(October effect)」という投資家心理である。過去最悪の株価急落が起きたブラックマンデー(暗黒の月曜日)が1987年10月に発生したことで、投資家の間では10月も危険な月と言われている。特に大きな株価下落があると「ブラックマンデー再来ではないか?」とのパニック状態も起こる傾向も強まるため、この10月も株式を保有せず、投資はハロウィン(10月31日)を過ぎた11月1日以降が望ましいというものである。

このような相場格言は色々と存在しており、例えば「トム・ソーヤの冒険」の著者であるマーク・トウェインは、「10月。それは株に手を出すには特に危険な月だ。そのほか危険な月は、7月と1月と2月と4月と11月と5月と3月と6月と2月と8月、それになんといっても12月だ」という一種の名言を残している。結局は、全ての月が株式投資には危険だという訳だ。

では、「ハロウィン戦略」とは意味がないのだろうか。そこでダウ平均株価の過去10年分のデータを調査してみたところ、面白い結果が出てきた。ある月の月初に購入し、その6か月後の月末に売却するのを基本戦略とする。「ハロウィン戦略」は11月月初に購入し、翌年の4月末に売却するものだが、過去10年の単純平均だとこの「ハロウィン戦略」が最も良好な成績を残しているのだ。

具体的には「ハロウィン戦略」を採用すると、過去10年は平均で5.71%のリターンが得られている。マイナスになったのは世界同時金融危機の発生を挟んだ2007年と08年の11月初めに購入した場合であり、その後の8年は全てプラスパフォーマンスになっている。その次にパフォーマンスが良かったのが「2月購入→7月末決済」であり5.08%のプラスパフォーマンスになっている。一方、逆に最も悪かったのが「5月購入→10月末決済」であり、プラスではあるが0.23%のパフォーマンスに留まっている。

これはあくまでも単純平均であり、「5月購入→10月末決済」の戦略でも10年中の6年がプラスになっている。直近の「2017年5月購入→17年10月末決済」の場合は11.52%のプラスパフォーマンスである。検証期間の取り方によっては違う結果が得られるが、過去5年に限定しても「11月購入→4月末決済」の「ハロウィン戦略」は7.67%と、「10月購入→3月末決済」の8.65%に次ぐ良好なパフォーマンスを実現している。

11月のダウ平均株価は早くも過去最高値を更新する動きを見せているが、今年の「ハロウィン戦略」が有効だったか否かが判明するのは来年4月末になる。トランプ大統領誕生後の米国株は、今年3月を除いて全ての月が上昇する力強さを見せているが、来年4月までこの勢いを維持できれば、「ハロウィン戦略」は8年連続で成功を収めることになる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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