ゴーダン財務相が辞任すれば、プラチナ価格は下落する?

(写真:ロイター/アフロ)

南アフリカ経済が混迷の度合を強めているが、今後の展開によっては同国が世界産出量の約7割をカバーするプラチナ(白金)価格にも大きな影響が出てくる可能性がありそうだ。

南アフリカ財務省は10月26日、中期予算編成方針を発表し、海外資金が流出するリスクを避けるために、財政健全化に軸足を置く方針を示した。政治的な混乱状況に加えて、このまま財政健全化が進まなければ、格下げのリスクが現実化し、同国通貨南アフリカランド相場の急落、インフレ率の暴走といった更なる混乱状況に陥ることが警戒されている。

格付け会社S&Pのアフリカ部門責任者は10月13日、南アフリカの現状は「通常の状態ではない」、具体的には「政治的な混乱と緊張」だと指摘した上で、12月2日の格付け見直しに際して格下げに踏み切る可能性も強く示唆している。この状況を打破するための改革が求められている訳だ。

そこでマーケット(外国人投資家)からの信認が厚いゴーダン財務相の手腕が注目されるが、同相は過去の不正問題で刑事訴追される可能性があり、検察当局は11月2日に裁判所への出頭を命じている。この不正問題に関しては「刑事事件」よりも「政争」との見方もあり、ゴーダン財務相が強力に推進する財政再建に不満を持った一部政治勢力がゴーダン財務相の追放を狙って政治闘争を仕掛けている可能性が指摘されている。

その真偽については明確な答えを提供することはできないが、いずれにしてもゴーダン氏が財務相の地位に留まることができないのであれば、外国人投資家は経常赤字の穴埋めのための資金を安心して提供できないことになり、更にはジャンク級(投資不適格級)への格下げというシナリオも現実味を帯びてくる。

仮にゴーダン財務相の訴追問題が「政争」との見方が正しければ、政敵は「南アフリカ経済の混乱」と「ゴーダン財務相による改革続行」の、どちらも受け入れがたい難しい選択を迫られることになる訳だ。

このままゴーダン財務相の辞任、更には南アフリカの格下げといった最悪の展開に発展していけば、当然に南アフリカ通貨ランド相場は急落することになる。実際に10月上旬にはメディアで検察がゴーダン財務相に出頭命令を出したとの報道が流れただけで、10月10日の南アフリカ通貨ランド相場は、対円で前日比4%を超える急落になっている。

このランド安であるが、実は宝飾品や自動車排ガス触媒として使用されるプラチナ価格の急落を招きかねない動きでもある。ランド安は他国の通貨建てのプラチナ価格(円建てプラチナやドル建てプラチナ)のコスト引き下げに直結することになるためだ。実際に昨年はドル建てプラチナ価格が年間で26%の急落になっているが、その要因の大部分がランド相場が対ドルで年間34%の急落となった影響が指摘されている。南アフリカに産出地域が集中する特殊性が、一カ国の通貨環境によって価格水準も一変させてしまう危険性を生み出しているのである。

もちろん、経済的な混乱状況が深刻化すれば、プラチナ生産環境の混乱によって供給不足が発生するような可能性も想定はしておく必要がある。ただ、それは中長期的な影響の話しであり、短期スパンでは南アフリカ経済の混乱が強まれば(特にゴーダン財務相が辞任すれば)、プラチナ価格は値下がりし易い状況になっている。

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