日銀のカオス状態と米利上げ警戒の後退がもたらした円高・ドル安

(写真:アフロ)

ドル/円相場が急落している。8月下旬以降は米国の早期利上げ観測を織り込む形で円安・ドル高圧力が強まり、9月2日には1ドル=104.31円を付けていた。しかし、今週に入ってから地合いが一変し、9月6~7日にかけては一時101.23円まで、直近高値から最大で3.08円(3.0%)もの急劇な円高・ドル安圧力に晒されている。7日の午前8時台には、僅か10分で0.80円幅の円高・ドル安が発生するなど、ドル円相場を取り巻く環境は大きな変化を見せている。

その背景としては幾つかの要因が指摘されているが、一つには米国の早期利上げに対する警戒感が後退していることがある。9月2日に発表された8月米雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比15.1万人増に留まり、市場予測18.0万人増を大きく下回った。また、6日に発表された8月ISM非製造業指数は前月の55.5から51.4まで急低下し、2カ月連続の低下で今年最低を記録している。

米金融当局者からは、8月中旬以降にイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長を筆頭に早期利上げの可能性について言及する発言が目立っていたが、実体経済が本当に早期利上げを支持しているのか懐疑的な見方が広がっている。

一方、円サイドでは日本銀行の金融政策環境を巡るカオス(混沌)状態が、円高を促しているとの見方がある。7日には産経新聞が『日銀が20~21日の金融政策決定会合で実施する「総括的な検証」で、「統一見解」のとりまとめに難航していることが6日、分かった』として、1)マイナス金利の深堀り、2)国債購入量の調整、3)追加緩和反対で、各委員の意見集約が進んでいないことを報じている。同記事では、黒田総裁を含む数人がマイナス金利支持派とする一方、岩田副総裁が資金供給量拡大、木内・佐藤の両審議委員が更なる緩和策に反対とされている。

マーケットでは、この報道が7日朝の急激な円高・ドル安のきっかけになったとみる向きも多い。日銀の金融政策の方向が読みづらく、市場との対話がうまくいかないのではないかとの懸念は、「日銀の金融緩和→円安」という昨年までの構図が大きく変わったことを印象付けている。

日銀「総括検証」難航 政策委員が3分裂 黒田総裁は「マイナス金利派」か 「リフレ派」「追加緩和反対派」も…(産経新聞)

また、9月6日には浜田宏一・内閣官房参与が、20~21日に開催される日銀・金融政策決定会合について、米時間21日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定前に追加緩和を行うことは差し控えた方が良いとの考えを示したことがBloombergによって報じられている。「米国が量的緩和の出口に向かうのを躊躇すれば、日本は財務省の為替介入や日銀の外債購入によって投機的な為替投資家により真剣に対抗すべきだ」として、米国の政策対応を見極めてから追加緩和カードを検討すべきとの見方を示している。

浜田内閣官房参与:日銀はFOMC決定前の追加緩和は控えるべきだ(Bloomberg)

当面は、円サイドの環境が大きく変化するような展開(=日銀の政策への信認が一気に高まるような展開)は想定しづらい以上、改めて米国の早期利上げに対する警戒感を高めていくことができるか否かが、円安・ドル高再開のカギを握ることになる。米金融当局者はなお早期利上げを支持しているとみているが、当局者の発言などからその確信が得られる状況に転換がみられるかが、円安・ドル高再開の有無を決定づけることになりそうだ。

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