エルニーニョ現象で大豆価格に高騰の兆候

(写真:ロイター/アフロ)

シカゴの大豆先物価格が急騰している。2014/15年度、15/16年度と2年連続で記録的な豊作環境が実現する中、昨年8月下旬から今年3月上旬までは、1Bu(ブッシェル=27.215kg)=850~900セントの安値低迷相場が7ヶ月近くにわたって続いていた。しかし、その後は4月13日に950セント、20日に1,000セント、5月3日には1,050セントと急激な値上りが実現し、直近高値は5月10日の1,091.50セントと2014年7月以来の高値を更新している。今年1~2月時点と比較すると、実に20%を超える値上がり率になっている。

背景にあるのは、世界の大豆生産量の半分を占めるブラジルとアルゼンチンの二か国で、深刻な天候トラブルが発生していることだ。日本ではエルニーニョ現象の影響を耳にする機会が減っており、特に異常気象を感じさせるような状況にはない。しかし、グローバルな視点では、太平洋赤道付近から南米西海岸に向けて海水温度が異常をきたした状態が続いており、世界各地で天候不順が農産物生産に被害をもたらしている。

例えば、東南アジアでは深刻な干ばつ被害が発生しており、コーヒーやパーム油(食用油)、砂糖、天然ゴム生産などに生産被害が報告されており、それぞれの価格は値上りしている。例年だと5月は乾季から雨季への移行期になるが、今年は雨期に入っても十分な土壌水分を得られるのか、疑問視する向きが多い。

一方南米では、ブラジルで干ばつ、アルゼンチンで豪雨という正反対の天候障害が報告されており、これが大豆生産に大きな被害をもたらしている。この時期は、昨年秋に作付けした分を収穫し、二期作の作付けを行うことになる。しかし、今季は収穫直前の品質悪化、収穫作業のトラブル、その後の作付け作業のトラブルなどが断続的に報告されており、もはや従来の生産高見通しを達成するのは不可能との見方が強くなっている。

象徴的だったのが、米農務省(USDA)が5月10日に発表した最新の月例需給報告であり、そこではブラジル産が前月の1億トンから9,900万トン、アルゼンチン産が5,900万トンから5,650万トンまで、それぞれ大幅な下方修正が行われている。2カ国合計で350万トンの生産が失われた計算になるが、これは日本の年間大豆輸入量310万トンを上回る規模である。

世界的な人口増大や生活レベルの向上に伴う大豆油(食用油)、大豆ミール(家畜の飼料)の需要拡大に対応するため、南米は米国産大豆生産を補完する形で規模を拡大してきた。過去10年でブラジル産は75%、アルゼンチン産は17%の増産を達成している。南半球で米国産とは生産シーズンがずれることも、大豆需給の安定化に寄与していた。

しかし、今年はその生産規模を拡大している南米が壊滅的とまでは言えなくても大きな生産障害を受けており、世界の大豆需給に大きな混乱をもたらしている。特に、南米産の代替需要が米国産大豆に発生する可能性が高まる中、例年であればこの時期は米国産の生産状況に一喜一憂する「天候相場」になるものの、今季は未だ南米産の制約から抜け出せない状況が続いている。

日本の気象庁によると、「エルニーニョ現象は春の間に収束する」との見通しが示されており、いつまでもエルニーニョ現象の影響を警戒し続ける必要はない。しかし、それと同時に「夏にはラニーニャ現象が発生する可能性が高い」ともされておりエルニーニョ現象からラニーニャ現象への異常気象の受け渡しが進むような事態になると、世界の食糧価格は更に大きな混乱状況を迎える可能性もある。

それでも2012年の高騰相場時などと比較すると大豆価格は抑制されており、直ちに食品価格の高騰が問題になるような状況にはない。これで、食糧価格の高騰が原因の一つになった「アラブの春」のような暴動が起きる可能性も限定されるだろう。ただ、原油価格の急落に歯止めが掛かり始める中、過去2年にわたって安値低迷状態が続いてきた大豆価格が、大きな岐路に立たされていることは間違いなさそうだ。

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