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NY原油24日:トルコのロシア機撃墜で、上昇

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油1月限 前日比1.12ドル高

始値 42.04ドル

高値 43.46ドル

安値 41.86ドル

終値 42.87ドル

地政学的リスクの高まりを受けて、反発した。

アジア・欧州タイムは42ドル台前半を中心とした小動きになったが、その後はトルコ軍がロシア軍機を撃墜したとの報を受け、一気に43.46ドルまで急伸している。「イスラム国」に対処する国際協調に不透明感が強まる中、中東産油国の地政学的環境悪化が警戒された模様。ただ、引けにかけては早くも上げ幅を削る展開になり、42ドル台後半まで上げ幅を削っている。株安がニューヨークタイム序盤で一巡したことも、原油相場の上げ幅を限定した模様。

トルコとロシアとの関係悪化は、間違いなく「イスラム国」にとってはポジティブであり、中東地区の地政学的環境を悪化させる要因になり得る。ただ、両国が本格的な軍事紛争に突入するようなことがなければ、原油供給網に対する影響は限定される見通しであり、断続的な原油相場の押し上げ要因に発展するリスクは大きくないだろう。今後の展開には注意が必要だが、原油価格の押し上げ効果は一時的なものに留まる見通し。

明日は米週間需給統計が発表されるが、原油在庫は前週比で120万バレルの増加予想になっていることもネガティブ。引け後にはAPIの需給統計が発表されているが、前週比+260万バレルと在庫積み増しトレンドを維持している。製油所稼働率が着実に上昇する中、徐々に在庫積み増し力は限定されてきているが、在庫のピークアウト確認は先送りされている。

足元では40ドルの節目が支持線として機能しているが、なお需給リバランスの完結見通しが立ちづらい状況にある中、下値不安が大きい相場環境が続く見通し。地政学的リスクが新たな相場テーマとして浮上しているが、原油価格形成に対する影響は限定されよう。現行価格でも減産圧力が確認できる中、ここから急落するような必要性までは認めていないが、少なくとも大きく反発して減産圧力を緩めるようなことは許容されていない。ドル高や中国経済の減速懸念も強力な上値圧迫要因であり、原油相場の底入れ判断にはなお慎重スタンスが求められる。目先は、季節要因から在庫積み増し傾向にブレーキが掛かった際に、どの程度の反発力が見られるのかが注目される程度である。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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