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NY原油27日:米原油在庫増加懸念で続落、8月28日以来の安値更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油12月限 前日比0.78ドル安

始値 43.78ドル

高値 43.91ドル

安値 42.58ドル

終値 43.20ドル

根強い過剰供給に対する警戒感、明日発表される米原油在庫の増加観測を背景に続落した。8月28日以来の安値を更新している。

アジアタイムから戻り売り圧力が強く、断続的に値位置を切り下げる展開になった。前日に45ドルの節目を完全に下抜いたこともあり、チャート環境からも売り安心感が強くなっている。シェールオイルの生産環境が厳しさを増していることは間違いないものの、国際エネルギー機関(IEA)が2016年と通じた過剰供給見通しを示していること、明日発表される米原油在庫が前週比+375万バレルの増加予想になっていることなどが、原油相場を下押ししている。ニューヨークタイム入り語には一時42.58ドルまで急落した。その後はやや下げ幅を縮小する動きが強くなったが、自律反発的な値動きに留まっている。

季節要因から製油所稼働率が抑制される中、米国内では原油在庫に対する積み増し圧力が強まり易くなっている。引け後にAPIが発表した原油在庫も前週比+410万バレルとなっており、改めて米国内の過剰在庫環境が認識されるリスクが警戒されている。あくまでも季節要因に基づく動きだが、前年同期との比較では1億バレル前後の在庫が積み増しされる状況が続く中、仮に需給均衡状態が実現したとしても、原油価格の本格反発は困難であることが再認識されている。

一方、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は、原油価格の決定を市場機能に委ねる方針を再確認している。ベネズエラなどが積極的に協調減産の可能性を模索しているが、少なくともサウジアラビアは原油市場への介入を希望していないことが確認できる。これは、石油輸出国機構(OPEC)が生産調整やプライスバンド制の導入といった政策転換を行う可能性が低いことを意味し、原油価格の突発的な急伸リスクを限定しよう。

やや新規手掛かりに乏しい状況だが、過剰供給に対する懸念が強く、特に季節要因から米原油在庫に対する積み増し圧力が強まる中、原油相場の下値不安は大きくなっている。ドル高圧力が再開されていることもあり、40ドル割れを打診する展開が維持されよう。ただ、40ドル水準ではシェールオイル生産が持続困難なことが再確認される中、40ドル割れからの深追いは避けるべきだろう。瞬間的には大きく下押しされる可能性も残されているが、これ以上の安値は持続可能性が乏しい。35~60ドル水準をコアとした安値ボックスを想定している。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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