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NY金2日:米雇用統計を受けて急反発、利上げ見通しに不透明感

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比22.90ドル高

始値 1,112.50ドル

高値 1,140.90ドル

安値 1,103.80ドル

終値 1,136.60ドル

9月米雇用統計がネガティブ・サプライズになったことが材料視され、急反発した。

アジア・欧州タイムは総じて戻り売り優勢の展開になり、雇用統計発表直前には1,105~1,110ドル水準まで値下がりしていた。強めの内容になることで、10月27~28日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げリスク織り込みを迫られる可能性が警戒された模様。ただ実際の雇用統計は市場コンセンサスを大きく下回る内容に留まったことで、雇用統計発表後は安値から最大で30ドル超の切り返しがみられ、急反発して引けている。

9月雇用統計であるが、非農業部門就業者数は前月比+14.2万人となった。市場予測+20.1万人を大きく下回っている。8月分に関しても速報の+17.3万人から+13.6万人まで大幅に下方修正されており、8月と9月の米雇用環境が悪化したとの評価は避けられない状況になっている。失業率は前月の5.1%から横ばいになったが、労働参加率は前月から0.2%低下の62.4%、平均時給は前年同月比+2.2%と伸びないなど、擁護できるポイントが見当たらない状況になっている。

引け後にはセントルイス連銀ブラード総裁が1ヶ月分の統計に過ぎないとの楽観的な評価を示し、労働市場全体の進展にはなおなお期待を寄せている。しかし、この数値では10月利上げ着手を正当化するのは難しく、年内利上げ着手が可能なのかも、改めて慎重ムードが広がらざるを得ない状況と化している。

イエレンFRB議長など大部分の当局者は年内利上げ見通しを繰り返し表明しているが、残り2ヶ月で利上げ着手に向けての安心感を作り出していくことができるのか、不透明感が強くなっている。追加緩和の方向性が模索されない限りは反発力は限定される見通しだが、金相場が利上げ着手見通しを織り込む形で下落する流れは、仕切り直しを迫られている。目先は利上げ見通しの修正に伴うショートカバーをこなす必要性が浮上している。戻り売り優勢の地合そのものは崩れないと考えているが、改めて大きく売り込むには当局者のタカ派発言や良好な米指標などが要求されている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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