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NY金19日:FOMC議事録を受けて急伸、9月利上げ警戒が和らぐ

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金8月限 前日比11.00ドル高

始値 1,116.70ドル

高値 1,130.90ドル

安値 1,115.50ドル

終値 1,127.60ドル

引け後に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公開を控えているが、中国リスクに対する警戒感が根強く、反発した。

アジアタイムは1,110ドル台後半を中心とした狭いレンジで揉み合う展開になったが、欧州タイム入りと前後してまとまった買いが入り、一揆に1,120~1,125ドル水準まで値位置を切り上げている。欧州株が全面安の展開になる中、引き続き中国発のリスクオフ・イベントに対する警戒感が強い。ニューヨークタイムに入ると、7月消費者物価指数が前月比+0.1%と市場予測+0.2%を下回ったことも材料視され、更に1,125~1,130ドル水準まで上げ幅を拡大している。

こうした中でFOMC議事録の発表を迎えたが、今回の議事録はドルにネガティブ、金にポジティブと評価され、金相場は1,130~1,135ドル水準まで更に上げ幅を拡大している。議事録の内容そのものは特にサプライズ感があるものではなく、利上げ時期の接近を追認する一方で、利上げ判断には特に雇用に関してもう少し確かな指標改善が欲しいとのニーズが報告されているのみである。ただ、マーケットでは9月利上げに向けての進展が見られなかったことが材料視され、利上げ警戒感を和らげる形で、ドル売り・金買いで反応している。

今回のFOMC議事録は中国の預金準備率引き上げ前の議論であることを割り引いて考える必要があるものの、引き続き今後の金融政策について明確なメッセージを発するものではなかった。8月に続いて9月の雇用統計も一定の力強さをみせれば9月利上げの可能性も十分にある一方、12月まで利上げ時期を先送りする選択肢も十分にあり得る、曖昧な状況が続いている。いずれにしても年内利上げ着手の流れが大きく修正を迫られる環境にはなく、米金融政策環境を手掛かりに金相場が大きく上昇するような環境にはないと考えている。

警戒すべきは中国発のリスクオフ・イベントの方であり、リスクマーケットが落ち着きを取り戻す動きと連動して、金相場の上値の重さが再確認される流れとなろう。CRB商品指数は年初来安値を更新しており、他商品市況とのバランスからみても、金相場の割高感が強くなっている。FOMC議事録よりも、中国リスクの消化状況に注目すべきだろう。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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