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NY金8日:ドル安で反発、中国現物市場では値ごろ買い

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金8月限 前日比比10.90ドル高

始値 1,154.00ドル

高値 1,163.80ドル

安値 1,145.90ドル

終値 1,163.50ドル

為替相場がドル安方向に振れたことが材料視され、反発した。

アジアタイムは前日の急落地合を引き継ぐ形で、戻り売り優勢の展開になった。欧州タイム入り時点では一時1,145.90ドルまで値位置を切り下げている。ただ、年初来安値(1,143.80ドル)の攻略には失敗し、その後の欧米タイムはドル安連動でショートカバーが先行する展開になっている。

中国で株式・商品相場が急落傾向を維持する中、グローバルマーケット全体が「質への逃避」を進めている。しかし、中国株の急落を眺めてのアジアタイムに金相場が急落するなど、特に「安全資産」の観点から買いを入れるような動きは見られなかった。中国上海現物市場では売買高が急増しており、アジア現物市場では値ごろ買いが強くなっていることは間違いない。ただ、金上場投資信託(ETF)の換金売り圧力が強まるなど、なお需給要因からボトム形成を促す動きは鈍い。当然に中国が本格的な在庫手当に動きだせば金価格の下値はサポートされることになるが、アジアタイムに本格的な安値是正の動きを見せるまでは、力不足の評価が妥当だろう。リースレート等にも目立った動きは見られない。

ただ、本日は為替がドル安方向に振れたことが金相場をサポートしている。ギリシャ情勢には特に目立った進展はみられず、ユーロ圏側は12日を交渉期限に区切っている。ギリシャ政府は9日までに最終提案を行う必要があり、ギリシャを取り巻く混乱状況はクライマックスに近づいている。このためギリシャのユーロ圏離脱シナリオに対する警戒感も強いが、本日は前日までのユーロ急落(ドル急伸)に対する修正局面になったことで、ドル建て金相場を売り込む動きも一服している。

引け後には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(6月16~17日開催分)が公開されているが、こちらはタカ派とハト派のメッセージが交錯し、金市場の評価が割れた。経済は利上げを支持する状況に近づきつつあるとの認識が示されるも、1人を除く全メンバーが経済成長が利上げを正当化できるほどの力強さを得ている「更なる証拠」を目にする必要性を指摘している。年末までに完全雇用に近づくとの見通しが示されるも、ギリシャや中国などの海外部門、また米国内でも消費や設備投資が想定されていた程の強さを見せていないことに懸念が示されている。9月に利上げが実施されてもされなくても違和感がない内容であり、この結果を金価格に織り込むのは難しい。為替市場も、特に目立った反応は示さなかった。

今後、ギリシャのユーロ圏離脱といった動きに発展していけば、瞬間的に金相場が買われる可能性は残されている。しかし、リスクオフイベントも米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ着手を阻害するようなレベルに発展しない限り、金相場の戻り売り基調には変化を生じないとみている。中国現物市場での値頃買いが膨らんでいるが、中国株の急落で手元流動性が悪化する中で、金市場に本格的に資金が流入するような展開は想定しづらい。FRBに利上げを断念させるような危機レベルに発展するまでは、下値不安の大きい相場環境が維持されよう。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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