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NY原油16日:シェールオイル減産の思惑で続伸、サウジ大規模増産は材料視されず

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油5月限 前日比0.32ドル高

始値 55.92ドル

高値 57.42ドル

安値 55.07ドル

終値 56.71ドル

米シェールオイル減産に対する警戒感が根強く、小幅続伸した。

前日に米エネルギー情報局(EIA)が発表した需給週報では、米シェールオイルの減産と米原油在庫の伸び鈍化が確認されている。これを受けて、将来の需給均衡化を先取りする動きが強まり、原油相場は戻りを試す動きが続いている。実際にこれによって需給均衡化が実現するのかは慎重な判断が求められるが、少なくとも原油相場の急落で供給環境が変わってきていることは間違いなく、原油市場では投機買いが膨らんでいる。

石油輸出国機構(OPEC)の4月月報では、3月のOPEC産油量が2月の日量2,997万バレルから3,079万バレルまで急増していたことが報告されている。特に、サウジアラビアは34.7万バレルの大幅な増産に踏み切っており、シェールオイルの生産が多少鈍化したとしてもその影響が完全に払拭されるような動きを見せている。末端需要環境の改善を受けて、公式販売価格(OSP)引き上げと同時に、シェア維持のための供給拡大を行っていることが明確に確認できる。ただ、マーケットの関心は国際需給動向よりも米国の供給環境の一点に集中しており、強気ムードを払拭するには至らなかった。チャート主導の買い圧力も強く、昨年12月23日以来の高値を更新している。

OPEC月報では、国際需給の緩和状態解消がなお難しいことが再確認された。前日の国際エネルギー機構(IEA)月報でも石油需給の先行きには悲観的な見方が示されている。最近の原油相場はシェールオイル減産の一点で楽観ムードに支配されているが、現実には原油高を押し進めることができるような需給環境・見通しではないと考えている。このため、現行価格は割高と評価しており、今後は高値是正の必要性が強いとみている。短期トレンドは明らかに上向きであり、将来的な需給均衡化を先取りする動きが強まるリスクには注意が必要だが、下値不安の大きい価格水準と評価している。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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