OPECが原油価格をコントロールする時代は終わった

11月27日にウィーンで開催された石油輸出国機構(OPEC)総会は、原油市場が新たな時代を迎えたことを明確に示すものになった。

中国を筆頭とした世界経済の成長鈍化を受けて、世界石油需要の伸びは従来想定されていたレベルを達成できなくなっている。例えば、国際エネルギー機関(IEA)の2014年世界石油需要は前年比で日量+68万バレルとなっているが、これは6月時点で予想されていた伸び幅の僅か半分のレベルである。一方、これまでの「高い原油価格」に刺激を受けたシェールオイルやオイルサンド、深海油田などのいわゆるタイトオイルは着実な増産傾向を維持しており、世界石油需給バランスに対しては強力な緩和圧力が働いた状態になっている。こちらもIEAの推計をみておくと、1~3月期が日量40万バレル、4~6月期が120万バレル、7~9月期が60万バレル、それぞれ供給「過剰」となった見通しである。

従来の石油市場の常識であれば、こうした局面ではOPECが需給コントロールに乗り出すことで、原油需給が過度の供給超過に傾き、原油相場が急落することを阻止してきた。古くは「プライスバンド制」と言われる産油政策の下で、原油価格が一定の水準を上回るか下回った場合には、OPECが自動的に増産・減産を行うことで、OPECが望ましいと考え、かつ消費国も受け入れ可能な高値誘導が行われてきた。

しかし、21世紀型オイルショックともいえる2004~08年にかけての原油価格急騰(暴騰)は従来では採算性や技術上の問題から開発が見送られていた高コストの原油生産を促し、原油供給環境は一気に大きな「伸びしろ」を獲得することになった。これが、OPEC主導の需給・価格コントロールに限界をもたらしている。

例えば、シェールオイルの生産が本格化している米国では、2011年が日量564万バレルだった産油量が、12年650万バレル、13年746万バレルと急増しており、今年は前年比+111万バレルの857万バレル、来年は更に942万バレルまでの増産が見込まれている。これは、もはや米国1カ国で世界の石油需要の拡大分を吸収できる能力を獲得したことを意味し、OPECとしては石油需要環境が従来の力強さを取り戻さない限りにおいては、断続的に減産対応を迫られる時代に突入したことを意味する。

これまで、OPECは原油供給環境の安定化をもたらすとして、少なくとも表面的には「シェール革命」を歓迎する意向を示していた。しかし、サウジアラビアなどはなぜ減産対応を求められるのは米国ではなくOPECなのか強い不満を示しており、少なくとも原油生産における米国とサウジの蜜月時代は大きな転換期を迎えている。

OPECとしては当然に従来通りに減産対応を行う選択肢も存在し、仮に今回の総会で大規模な減産が合意されていれば、少なくとも短期スパンで原油価格は反発することも可能だった。しかし、OPEC産原油に対する需要減退という構造問題を解決しない限り、OPECが追加減産対応を求められるのは時間の問題である。このため、OPECとしてはこれ以上のシェア低下は受け入れられないと世界に明確に宣言したのが、今回のOPEC総会だったと言える。

■OPECではなく価格が需給をコントロールする時代

それでも、今年前半まではサウジアラビアを筆頭にOPECが原油需給コントロールを継続してきたことで、原油価格はOPECが望ましいと評価している1バレル=100ドル水準を維持してきた。実際に今回のOPEC総会でも、ベネズエラなどから減産対応を呼び掛ける声が聞かれた。

しかし、OPECの総意としては「OPECが需給調整機能を果たし続けるのは不可能」というものであり、今後は市場の需給調整機能に需給コントロールの役割を委ねることになった。これは、価格カルテルとしてのOPECの産油政策が事実上破綻したことを意味し、今後の原油相場は弱肉強食時代に突入することになる。

差し当たっては、足元の供給過剰を世界のどこかの地域で負担することが求められることになり、原油価格の安値誘導で採算合理性の観点から減産対応が始まる価格水準を打診することになる。政策的な生産調整の動きが期待できない以上、「原油安→原油生産停止・減産」の動きが促されることになる。従来は80ドル水準がその分岐点といわれていたが、70ドル台中盤でもシェールオイルの増産傾向にブレーキが掛かったことは確認できず、原油価格は更なる安値対応が求められている。

これは、換言すれば2008年前後に拡大した原油供給の「伸びしろ」が不要になったことを意味する。従来は、中国などの急激な経済成長で原油供給が不足する中、増産対応を促すための原油高が必要だった。そのクライマックスが、2008年7月の147.27ドルという過去最高値だった訳だ。しかし、現在は逆オイルショックとも言える状況に陥っており、原油安によって過剰増産にブレーキを掛けることが求められている。ちなみに、OPEC総会が行われた11月27日の米マーケットは感謝祭で取引が行われていないが、時間外の電子取引では前日比-4.64ドルの69.05ドルと6%を超える急落相場になっている。原油価格が70ドル台を割り込んだのは、2010年6月以来のことである。

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【2014/11/28 13:30追記】 第2パラグラフの「1ドル=100ドル水準」は「1バレル=100ドル水準」の誤りでした。訂正して、お詫び致します。