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「3H」は大き過ぎ?! テレビを買い替えるなら必読! 画面サイズ選びの新基準 

鴻池賢三オーディオ・ビジュアル&家電評論家
*写真はイメージです(筆者撮影)

液晶やプラズマといった薄型テレビが登場して以降、ブラウン管では不可能だった40型以上のテレビも身近になった。価格の下落も手伝い、テレビの売れ筋画面サイズも年々大型化している。

地上デジタル放送開始から10年。当時購入した薄型テレビはくたびれてきた頃だろう。また、消費税アップも目前に控え、大画面テレビへ、もしくは話題の4Kテレビへの買い替えを真剣に検討している消費者も多いはずだ。

テレビを購入する際、画質や機能などの詳細は別途考えるとして、だれもが熟考すべきは、「快適な視聴」に関わる画面サイズである。大きすぎる画面は、目の疲れや動画酔いなどの原因になるからだ。

今回は、そんな重要な、テレビの画面サイズについて深く考える。

定説の「3H」とは?

メーカーのカタログや電器店の店頭では、画面サイズの選び方として、「適正視聴距離=画面の高さの3倍」(通称 3H)を提案しているケースが多い。今や常識と言って良いだろう。

具体的には、32型なら画面の高さが60cm程度なので、適正視聴距離は120cm程度となる。言い換えると、120cmの視聴距離なら32型を選びましょう・・・という事だ。同じく、40型なら150cm程度、50型なら180cm程度、65型なら240cm程度と計算できる。

しかし、これでは、画面が「大き過ぎ」あるいは「近過ぎ」の感は否めない。

なぜ、「3H」が定説となったのだろうか?

そもそも、「適正視聴距離=画面の高さの3倍」(通称 3H)の由来

「3H」説の由来は、NHKがハイビジョン規格の策定時、臨場感を得られる水平方向の角度を約30°とし、視力1.0の人間がブラウン管テレビの走査線を認識できない密度として、走査線数を1125本と決定した経緯から、画面の縦横比比が16:9の場合、画面の高さの3倍(3H)に相当すると導き出した事に拠る。

3Hは、走査線が見えない最短距離として意味のある数値で、また、この事から、3Hの視距離を前提に制作された作品や、特に視差を伴う3D映像は、その見え方や立体効果を3Hの距離で見た時に最適となるように制作されているケースが多い。

まとめると、「3H」は制作者の意図を受け取る上で重要な指標の一つと言える。

実際問題として「3H」が大き過ぎると感じる訳

「3H」では画面が大きすぎる(近すぎる)という感覚を持ちやすい。何故だろうか?

そこには、規格開発時の前提と、実際の家庭の視聴条件に、様々な違いがあるからだ。

例えば、ブラウン管と固定画素型(薄型テレビ)との違いもあるだろうが、評価に用いた画像の違いが大きいと思う。NHKが規格開発時の評価に用いた映像は静止画だったのに対し、実際に視聴者が見るのはいろいろなタイプの動画映像である。動画映像の中には、スポーツ番組のように被写体の動きが激しいものや、バラエティ番組やニュースなどでは、カメラの動きが大きくブレを伴うケースも多い。

総じて、実際の放送映像を「3H」で見ると、動きが激しくて疲れやすいと言える。

メーカーや販売店が適正画面サイズを推奨する際、「3H」が導き出された経緯や条件を示しているケースは皆無である。「大画面テレビの販売促進」のために「3H」は都合が良く、独り歩きしてしまったようだ。

新常識、3.9H~5.9H

2012年1月に発行された「薄型テレビの人間工学設計ガイドライン」(一般社団法人 日本人間工学会 薄型テレビの視聴に関する人間工学ガイドライン検討委員会)では、一般的な家庭で薄型テレビ(液晶テレビ/プラズマテレビ)を用いてテレビ放送を視聴する環境を想定し、実験によって好適な画面サイズと視距離の関係を示している。人間工学の観点から、快適と感じる視聴距離の目安として有意義な指標だ。

詳細は以下の図と計算式を参照頂くとして、快適な視聴距離は、24インチのテレビなら5.9H(画面の高さの5.9倍)、65型なら3.9Hと、画面サイズに応じて示されている。

出典:「薄型テレビの人間工学設計ガイドライン
出典:「薄型テレビの人間工学設計ガイドライン

この数式は設計者向けであるため少し難解だが、視聴距離に応じて適正な画面サイズが分かる早見表が、一般社団法人日本オーディオ協会発行の「ホームシアター映像 調整・環境 ガイドライン(基礎編:Ver.1.0)」に掲載されている。家庭やオフィスなどで、是非参考にして欲しい。

「3H」は間違いだったの?!

新しい基準が示されたかと言って、旧来の目安「3H」を否定するものではない。先述のように、条件を限定すれば、有用な指標である。

映画作品など、丁寧に作り込まれた映像は、視野を覆う大画面、言い換えると「近く」で見るほうが、没入感も迫力増して、映像の世界にのめり込める。

ポイントは、部屋の端から端まで目一杯の「3H」だと、目の疲れや映像酔いを感じたときに、テレビから離れられないので問題となる。6H以上離れられる余裕を持った部屋の広さとテレビの画面サイズを基本に、映画なら「3H」、より密度の高い4Kなら「1.5H」など、臨機応変に近づいて見られるよう、家具やレイアウトを考慮しておけば良い。

テレビを買い替える際は、画面サイズにもこだわりを! 快適な大画面で、楽しいAVライフを楽しもう!

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オーディオ・ビジュアル&家電評論家

AV機器メーカーで商品企画職を務めた後、米シリコンバレーのマルチメディア向け半導体ベンチャー企業を経て独立。オーディオ・ビジュアル評論家として専門誌などで執筆活動を行うほか、エレクトロニクス 技術トレンドに精通し生活家電を含むホームエレクトロニクス、ネットワーク家電、スマート家電の評価、製品の選び方、賢い使い方、および未来予想をメディアを通じて発信中。NHKほかテレビ出演も多数。ビジュアルグランプリ(VGP)審査副委員長/米ISF認証ビデオエンジニア/米THX認証ホームシアターデザイナー/一般財団法人家電製品協会認定家電製品総合アドバイザー/甲種防火管理者

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