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森保ジャパンは、久保や三笘など欧州組の主力を招集し続けるべきか?

小宮良之スポーツライター・小説家
CLインテル戦の久保建英(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 10月4日、日本サッカー代表を率いる森保一監督は、”10月シリーズ”でカナダ、チュニジアと戦うメンバー26人を発表している。

 フィールドプレーヤー23人中、21人が欧州組だった。鎌田大地、堂安律の二人を「コンディション不良」で外しても、ヨーロッパでプレーする選手が大勢を占めた。二人選ばれたJリーガーにしても、あくまでバックアッパーと言える。約80人が欧州リーグでプレーする現状で、欧州組が代表の中心になるのは当然の帰結だが…。

 日本サッカー代表の活動は、すでに新たなフェーズに入っているのではないか?

欧州組を総動員する時代ではない

 率直に言って、欧州でチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグなどを並行して戦う選手たちには、現地でのプレーに専念させるべきだろう。なぜなら、彼らは代表の親善試合よりも重要な一戦を控え、コンディションを整えている。肉体的、精神的な負担を考え、クラブがターンオーバーを採用しているほどなのに、代表の親善試合で招集、消耗させるべきではない。

 彼らは世界最高峰の戦いを全力で戦うことで、日本代表の強化にも、日本サッカーの発展にも寄与できるはずだ。

 ヨーロッパと日本の往復は長旅なだけでなく、時差調整など肉体的な負担を強いられる。今回は日本国内だけだが、そこにアジア内の移動が入った場合は距離が長く、気候なども違うため、ケガのもとになりやすい。ロシアのウクライナ侵攻で、北周りの便がなくなっているし、特にスペインは日本と直行便がなく、疲労困憊の恐れもある。

 久保建英(レアル・ソシエダ)、冨安健洋(アーセナル)、上田綺世(フェイエノールト)、旗手怜央(セルティック)、三笘薫(ブライトン)、守田英正(スポルティング・リスボン)、遠藤航(リバプール)などCL、ELも戦う選手はクラブでの活動に専念すべきだろう。ラツィオの鎌田、フライブルクの堂安は、今回招集なしでむしろ今後の活動にアドバンテージを取れる。

 国内の親善試合に欧州組を総動員するのは、もはや時代に合っていない。10月シリーズのテストマッチ、あるいはアジアの弱小国との対戦は、サイズダウンした陣容で十分。端的に言えば、7,8人の欧州組(例えばセルティックやシントトロイデンのように多くの日本人選手がいるクラブから選出)+Jリーガー+MLSやKリーグ勢になるか。

ペドリのオーバーワーク

 選手は代表招集を喜んで受ける。しかし、常にケガや体調不良のリスクを伴う。転ばぬ先の杖ではないが、代表での活動は限定するべきだ。

<高いレベルの国内リーグ、ヨーロッパカップ戦を並行して戦う選手には、ランクの低い代表戦は回避させる>

 代表監督が、そうした姿勢を示さない限り、選手の方から招集を断ることはできないだろう。

 2020-2021シーズン、スペイン代表MFのペドリ(20歳)は当時、十代ながら眩しい輝きを見せ、才能豊かなプレーで70試合以上も公式戦のピッチに立った。FCバルセロナの選手としてだけでなく、代表選手としてEUROを戦い、東京五輪では五輪代表としても試合を重ねた。その結果、筋肉系の故障を今も引きずっている。大車輪の活躍だったが、そのツケを払わされているのだ。

 来年1月のアジアカップでさえも、ベストメンバーで挑むべきなのか。議論の余地はある。例えばスペインでは、1月は国内カップも含め、実は多くの試合が組まれている。そして2月からは、欧州カップ戦が佳境に入る。

 にもかかわらず、アジアカップに身を投じさせるべきなのか。

森保監督のスキルアップに

 その点、今年11月からスタートするW杯アジア予選も、同じことが当てはまる。北朝鮮やシリアを相手に”1軍”でぶつかる必要はない。特に北朝鮮はアジア大会でも蛮行を繰り返し、一線級の選手が相手するのに値しないチームだ。

 国内組を中心に、森保監督の采配で勝利を重ねることによって、少しは試練になる。欧州組の有力選手が能動的、主体的にプレーできるのは分かってきていることだけに、むしろ監督のスキルアップの機会にするべきだろう。そこで力を引き出せないようなら、指揮官の手腕が問われる。

 森保ジャパンにおいて、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグでプレーする日本人選手は、かつてないほど多くなっている。それは紛れもない事実である。親善試合やアジアレベルでは、ターンオーバーを採用するのも一つの手だろう。さもなければ、有力選手に甚大な消耗を強いることになる。スポンサーの思惑やスタジアムの集客という問題に向き合っても、選手の負担を避けるべきだ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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