新型コロナウイルスの感染拡大で多くの企業がかつてない苦境に立たされている。とくに深刻なのはサービス業界だ。3密回避と規制により、集客や賑わいが良しとされていたこれまでの常識がくつがえされてしまったことは大きい。

 一方、テイクアウトやネット通販、リモートによるサービスなど、さまざまな工夫でしのぎ、政府の支援策もこれまでになくスピーディに行われたことで、昨年の企業全体の倒産件数はかなり低水準となっている[参照]。

 だが、事態が長期化するなか打つ手も乏しくなりつつあり、さらには、金融機関による緊急融資が通常対応になった場合、貸出先の選別が予想されるなど不安材料は多い。新型コロナウィルスワクチンの接種が本格化しているが、接種率がどこまで伸びるのか、また変異株が広がっている事など、いわゆる”出口”はなかなか見えない。

 ウィズ・コロナの時代と言われるいま望まれる中小企業支援とはやはり、「下がりきった売り上げをいかに戻すか」だろう。私たち支援側に求められているのは「より迅速な売上増」だと言える。

 こうしたなか、昨年12月、近畿の4つの“Biz”が連携し「ビズネットワーク」が始動した。運営する自治体の協力関係とともに、業界の第一線で活躍してきた各センター長が持つ得意分野のアイデアやノウハウの共有と、その広域にわたる企業への助言やビジネスマッチングがしやすくなった。

●各業界トップランナーの知恵を広域展開して支援

 「ビズネットワーク」構想というブレークスルーがおきたのは、近畿の各Bizで選出されたセンター長らの顔ぶれにあった。

 昨年12月、奈良県広陵町と同大和高田市は共同で「広陵高田ビジネスサポートセンターKoCo-Biz(ココビズ)」を開設し、センター長に小杉一人氏を起用した。彼は、LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)グループの日本法人で取締役を務め、一昨年度まではソニアリキエルジャポン株式会社の代表取締役を務めるなど、約23年間にわたりファッション業界の世界的企業で活躍してきた、まさにラグジュアリーブランドのスペシャリストだ。

 同月にはまた、開設から4年が経過した大阪府大東市の「大東ビジネス創造センターD-Biz(ディービズ)」で繁田智雄氏が新センター長として起用された。彼は、博報堂など大手広告代理店においてテレビCMの企画制作に携わるなど、数々の実績を上げてきた業界のエキスパートである。

 2018年に開設した京都府福知山市の「福知山産業支援センタードッコイセ!biz」の西山周三センター長にしても、実家の老舗酒造会社を再生し世界的酒造メーカーに成長させ、その手腕が広く知られる人物だ。

 私は自分が対応した相談等で彼らの専門領域に当てはまったものは、ためらいなくアドバイスを仰いだ。自分でリサーチをかけるよりも早いし何より確かだ。すると、業界で圧倒的成果を上げてきたことがよくわかるアドバイスがどんどんでてきた。近畿にはすごい人材が集結している。それぞれの能力をかけあわせ広域展開することで、よりパワーアップした企業支援が可能になるのではないか? これがネットワーク化構想につながっていった。

 タイミングを同じくして地域を“越境”した案件が多数動いていたのもこの方向性に確信を持たせてくれたと思う。例えば、広島県福山市の福山ビジネスサポートセンターFuku-Biz(フクビズ)の池内プロジェクトマネージャーがその経歴を生かした助言をすることで新商品化が進んだ大阪府岸和田市の岸和田ビジネスサポートセンターKishi-Biz(キシビズ)の案件がある。ターゲットをしぼりこんだ他に類を見ない新商品の情報公開が楽しみだ。他にも、京都府福知山市のドッコイセ!biz西山センター長は、北海道の釧路市ビジネスサポートセンターk-Biz(ケービズ)が応援している酒蔵の案件に対しリモートでアドバイスをした。

 連携案件の多くは私が促して動いたものだが、多種多様な相談が寄せられる中、内容によって半端なく精通した人材が仲間の中にいるのなら、頼らない手はない。

山形市で行われた東北・北海道Bizネットワークの記者会見にて
山形市で行われた東北・北海道Bizネットワークの記者会見にて

●中国・四国と東北でも広がるビズネットワーク、“Biz”と連携する地域金融機関

 近畿の後は他地域においても「ビズネットワーク」化が急速に進んだ。今年2月には、中国・四国地域の4拠点(広島県「福山ビジネスサポートセンターFuku-Biz」、「東広島ビジネスサポートセンターHi-Biz(ハイビズ)」、山口県「萩市ビジネスサポートセンター(はぎビズ)」、香川県「坂出ビジネスサポートセンターSaka-Biz(サカビズ)」)による「中国・四国Bizネットワーク」が始動。

 続いて4月には、宮城県に先月開設した気仙沼ビジネスサポートセンター(気仙沼ビズ)を含む東北・北海道地域の4拠点(山形県「山形市売上増進支援センターY-biz(ワイビズ)」、北海道「釧路市ビジネスサポートセンターk-Biz」、秋田県「湯沢市ビジネス支援センターゆざわ-Biz」)による「東北・北海道Bizネットワーク」が始動した。

 このネットワーク化の報道を見て、あるビズに近畿圏を拠点にする金融機関の経営者が連携の意向を伝えてきた。中小企業の本業支援を期待されている地域金融機関がこの連携に強い関心を寄せてくれた事は良いことだと思う。山形市のY-bizは2年前の2019年から地元の金融機関の職員を研修生として受け入れているのだが、今年に入って埼玉県の狭山市ビジネスサポートセンターSaya-Biz(サヤビズ)と福山市のFuku-Bizでも金融マンの研修がはじまった。厳しい状況にある中小企業を支援すべく、Bizと地域金融機関による強固な連携体制が少しずつ広がり構築されつつある。

 コロナ禍における中小企業支援の現場からみえてくるのは、けっして暗然たる状況ばかりではない。現場に入ると、意外にも飲食関連では起業相談が目立ち、老舗料理店や観光業者からは、新たな試みの相談を受けることが増えた。財務は悪化しているはずなのだが、報道で受けるイメージほどマインドはけっして下向きではないのだ。

 一方、前向きにチャレンジしようという気概とともに、実際に多くの経営者から聞かれるのが、「経験のないことなので“一緒に考えてほしい”」という強い期待だ。Bizモデルは伴走型支援であることが大きな特徴だが、いまほどこのことが求められているときはないと身をもって感じている。

 中小企業の力になれる人材は各地域に確かにいる。コロナ禍で一気に利用がひろまったITサービス等も活用しながら、連携し、スピード感を持って、売上増を支援していかねばならない。

[参照]全国企業倒産状況(東京商工リサーチ)

https://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2020_2nd.html