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金正恩の「温泉リゾート」で男女26人が禁断の行為

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
陽徳の温泉施設を視察した金正恩氏(朝鮮中央通信)

 北朝鮮の首都・平壌の奥座敷とも言うべき、山間の温泉保養地、陽徳(ヤンドク)。古くから温泉地として知られていたが、金正恩総書記が旗振り役となり、殺到する中国人観光客を誘致にするために巨大な温泉リゾートが建設され、2020年1月にオープンした。

 ところが、その後に世界的な新型コロナウイルスの大流行が始まったのは周知の通り。北朝鮮は外国人観光客の受け入れを中止し、リゾートは閑古鳥が鳴く事態となってしまった。

 それまで比較的豊かな生活をしていた観光地の従業員はたちまち困窮。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の七宝山(チルボサン)の観光施設の従業員は、給料も食糧配給も受け取れなくなり、飢えに苦しむことになった。

 陽徳の従業員は、ご禁制の品を運ぶという新たなビジネスに飛びついた。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 陽徳温泉文化休養地の案内管理員6人は、平壌と陽徳を結ぶ温泉バスを使って、反社会主義、非社会主義に該当する録画物、要するに韓流ドラマや映画のコンテンツを運び、地元住民に販売していた。

 ところが、これが82連合指揮部に発覚。6人が逮捕された。その後、邑(郡の中心地)で開かれた公開思想闘争会議(吊し上げ)で、中央から下された特別指示文が読み上げられ、事件に関与していた別の20人の男女がその場で逮捕された。

 捜査の結果、26人は、コンテンツの入手、運搬、販売を役割分担して行っていたことがわかった。

 82連合指揮部は、国営施設の陽徳温泉休養地でこのような問題が発生したことに遺憾の意を示し、今回の事件を政治犯罪として扱えという中央の指示に基づき、6人に対して重罰を下す方針を示した。

 さらに、担当機関、企業所の責任者、朝鮮労働党のイルクン(幹部)担当の保衛員(秘密警察)、安全員(警察官)まで連帯責任を取らされ、何らかの処分を受ける可能性が高く、いずれも恐怖に震えていると、情報筋は伝えた。

 今回の事件だが、依然として全容は掴めていないようで、平安南道安全局(県警本部)は、平城(ピョンソン)、价川(ケチョン)などで活動していた、コンテンツを提供していた一団について捜査を進めているとのことだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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