犯罪者4倍増…北朝鮮を悩ませる「やり過ぎ」金正恩命令
韓国軍合同参謀本部は17日、北朝鮮が同日、朝鮮半島東の海上に向け未詳の飛翔体を発射したと発表した。弾道ミサイルの可能性が高いという。北朝鮮のミサイル発射は今年に入りすでに4回目だ。久しぶりの軍事示威と言えるが、その一方で国内では、治安面に問題も見られる。
北朝鮮当局は金正恩総書記の厳命を受け、韓流視聴、違法携帯電話の使用など反社会主義、非社会主義行為の集中的な取り締まりを、中国との国境に接した地域を中心に1年以上続けている。
その結果、「犯罪者」が量産される状況となっている。
(参考記事:有名女優も処刑…北朝鮮「性録画物」摘発で死屍累々)
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると今月6日、咸鏡北道検察所で、平壌の中央検察所(最高検察庁)からやってきたイルクン(幹部)2人、道、市、郡の検察所、安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)のイルクンが集まり、会議が行われた。
その場で明らかにされたのは驚くべき数字だ。2019年と2021年を比較して、安全部に逮捕された人の数が4倍に増加したというのだ。
「国境に接する会寧(フェリョン)や茂山(ムサン)では、2軒に1人は逮捕者がいるほど」(情報筋)
前述の通り、反社会主義、非社会主義行為の取り締まりが強化された結果にほかならない。ちなみに別の情報筋によると、同じ咸鏡北道で、2020年末から2021年末までに処理された犯罪のうち、最も多かったのが、反動思想文化排撃法違反、つまり反社会主義、非社会主義行為を行った容疑で、全体の4割を占める。
地域住民の不満が高まっていることは言うまでもないが、今回の会議では処罰の水準を下げることが議論された。具体的には、国の政策に忠実に従った結果、間違いを犯したり、困難な部門で朝鮮労働党の政策の貫徹のために頑張ったものの、意図せず事故を起こした者を、一般の犯罪者と同じように扱う現象を克服しようというものだ。
司法機関のイルクンは、一般の犯罪と業務上過失とがきちんと区別されるように、政治的判断を深め、視野を広げることが求められた。中でも検察所のイルクンに対しては、安全部の捜査記録を書類だけで判断するのではなく、容疑者の人となり、普段の働きぶりなどの把握を怠ってはならないと指摘がなされた。
これに付け加えて、中央検察所のイルクンはこのように述べたとのことだ。
「われわれは人を殺そうと法的度数(処罰のレベル)を上げているのではない」
「すべての人民を法的に処罰して、少数の忠誠心の高い幹部だけで共産主義社会になれるだろうか」
「社会主義の法律はすべての人を導いて、皆で共産主義社会を達成しようというのが目的なのだ」
また、韓流映像の視聴などで摘発されるのは若者が多いことから、彼らの思想的動向を把握し、厳罰に処すばかりではなく、時間をかけて思想的動向をよく見て、積むべき芽と育てる芽を分けて、後者には教養改造(思想教育)を施すように見極めるのが、司法機関のイルクンとしての役割だと強調した。
先日、韓国映画を5分間見ただけで逮捕され、労働教化刑(懲役刑)14年という重い判決を受けた中学生がいたが、もうこのような「点数稼ぎ」的な取り締まりはやめて、取締の対象を韓流コンテンツの流布に関わった者など、より罪状の重い者に絞ろうということだろう。