「革命の聖地」で不満を爆発させる北朝鮮の女性たち

金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮の金正恩党委員長は昨年12月、北部の両江道(リャンガンド)三池淵(サムジヨン)地区の再開発事業の竣工式に参加した。

三池淵には、民族の霊山である白頭山があり、さらには抗日パルチザン活動を行っていた金日成主席の本拠地で、金正日総書記の生家とされている「白頭山密営」もある。つまりは何重もの意味で「聖地」なのだ。そんな三池淵を誰もが羨む現代的高原都市に作り変えようというのが、件の再開発事業である。

しかし、竣工式は行ったものの、工事は続いている。完成予定に間に合ったことにして、金正恩氏の指導力をアピールするねらいがあるのだろう。そして、その工事には多くの女性が動員されている。

両江道のデイリーNK内部情報筋は、恵山(ヘサン)市の雲寵里(ウンチョンリ)の洞事務所(末端の行政機関)と、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)が朝鮮労働党の方針だとして地域の女性を動員、道路や住宅、さらには三池淵の建設現場などに送り込んでいる。当然のことながら女性たちの不満は非常に大きい。

まず、北朝鮮では女性が一家を経済的に支えている場合が多い。男性は、国から決められた工場、企業所、機関などの職場に出勤する義務がある一方で、女性は必ずしも職場に通う必要はない。この時点で差別的だが、それを活かして、市場で商売に励む。

男性が受け取る給料が「雀の涙」以下の水準にとどまる一方で、女性は市場でしっかり儲けて家族を食べさせている。

だからといって、北朝鮮の女性がジェンダーロール(性役割)がもたらす抑圧から解放されているというわけではない。政府から社会から「国や党、首領、革命のために黙々と働き、身を捧げる」という勝手な女性感を押し付けられ、そこからの逸脱は非社会主義的とみなされる。また、性暴力被害の深刻さも広く知られている。

(参考記事:「私たちは性的なおもちゃ」被害女性たちの血のにじむ証言を読む

市場での商売、家事労働に加え、こんな動員まで押し付けられ、女性たちが不満を持たないわけがない。さらに当局は、コロナ対策と農村支援戦闘の妨げになるとして市場を閉鎖する措置を取った。これに人々の不満が爆発し、抗議活動が頻発する事態となっている。

その一方で動員には「無条件で参加しなければならない」とプレッシャーをかけてくるが、女性たちはワイロを掴ませて動員を免れようとする。しかし、市場での商売がままらならないのでワイロとなるカネを稼げず、結局は週に1~2回、いやいやながら動員に応じざるを得ない。

「動員のされ方が地域ごとに違う」

「(市内の)松峯洞(ソンボンドン)では、扶養家族から一人だけ10日間動員に応じさせているのに、ここは女性に押し付けられている」(地域の女性)

これに対して保衛部(秘密警察)は、動員を逃れようとした女性数名を連行するなど強硬策に出ている。始末書を書かせるが、応じない場合には暴力を振るったり労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)送りにしたり、むちゃくちゃなやり方をしている。前述の通り、市場で市民の不満が爆発するのを見て、強硬に抑え込もうとしているものと思われる。

三池淵は労働環境が極めて劣悪だと悪名高い。昨年4月には、朝鮮労働党金正淑(キムジョンスク)郡委員会が、行き先を告げないまま美装工25人を三池淵に連れて行こうとしたが、気づかれて逃げられるという事件も起きている。