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「韓国のGSOMIA破棄は北朝鮮と関係ある」元米軍司令官が指摘

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
韓国の文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

韓国紙・朝鮮日報によれは、ソウルで15日、「韓米同盟、このままでよいのか」をテーマとするセミナーが開かれた。この席でビンセント・ブルックス元韓米連合司令官は「北朝鮮が『自主』の概念を強調し、韓米同盟を弱体化させるのを阻止すべきだ」と呼び掛けたという。

米国の強烈な不満

昨今、韓国の左派世論は「反日」により席巻されているが、彼らの思想の土台にはもともと、より強烈な「反米自主」の意識があった。歴代の保守政権は米国に従属しており、韓国は米国の半植民地であるとの見方をしていたからだ。

筆者が過去形で述べているのは、近年になってからは運動圏出身の政治家たちの間でも、さすがにこのような発言は見られなくなったからだ。時を経ながら、彼らの米国に対する認識にも変化が起きたのかもしれない。

それでもホンネの部分、深層心理の部分ではわからない。

「反米自主」の意識が、韓国の左翼政治家たちの意識にDNAのように組み込まれているとすれば、それは容易になくならないだろう。そしてそれは、北朝鮮からの「民族自主」の呼びかけに敏感に反応してしまう。

ブルックス氏が懸念を表したのは、まさにこのことだ。同氏はセミナーで、「北朝鮮が『米国から独立的になれ』と韓国に圧力を加える意図を持っていることを懸念している」「私はGSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)もこれと関係があると信じている」などと語り、韓国政府がGSOMIAの破棄を宣言した背景にも、北朝鮮からの影響があったとの見方を示したという。

これは、ブルックス氏ひとりだけの考えではあるまい。米国の政界や軍関係者の間で広く共有されているのではないか。だとすれば米国にとって、日韓のGSOMIA終了は、北朝鮮に対するひとつの深刻な敗北だと映っている可能性がある。

ただ、GSOMIAは来月22日までは有効であり、それまでに韓国政府が判断を変えれば、延長されることもあり得る。米国はこれまでにも、韓国政府に対して強烈な不満を表明してきているが、GSOMIA延長を求める働きかけを、今後ますます強める可能性がある。

(参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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